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パニカル!  作者: タナカ
48/98

手がかりは………?



「ひぐっ………えぐぅ………」

「ほらほら、泣かないでください西村先生。はい、ティッシュです」

「ううっ………すみません」


 飯田の渡したティッシュを受け取り、桃ちゃんはちーんと鼻をかんだ。

 桃ちゃんには悪いが、かわいく潤んだ瞳が実にプリティーだった。


 なでなで


「………魔ーくん?」

「なんでもありません」


 俺は無言で桃ちゃんの頭をなでた。















 そして、しばらく後。


「………では、整理しましょう」


 ようやく泣きやんだ桃ちゃんと暗がりの廊下を歩きながら、状況を整理する。


「本日夕刻、午後5時頃。資料庫に何者かが忍び込みました。間違いないですね、三河くん」

「はい」

「では、あなたが見た犯人の特徴はどうでしたか?」

「えーと、遠目でしたから詳しい特徴はよくわかりませんでしたが、身長は180cmぐらいでしたね」


 俺より少し高いところを手で示しながら、そう言った。


「私は見なかったけど」


 飯田が不満げに言った。

 てかお前は盛大にあの犯人を逃がす手助けをしてくれたんだけどなくそったれ。


「……しかもご丁寧に鍵穴に細工でもしてくれたんですね」


 桃ちゃんが鍵を見ながら苦虫を噛み潰したように言った。

 飯田が、ですが………と口を挟んだ。


「……ぱっと見た感じドアがむりやり蹴破られた、とかそういう感じはなかったですよ」

「………ですよねぇ」


 桃ちゃんはうーん、と顎に手を当てた。


「この鍵を複製して使ったにしても、この特注の鍵がそう簡単に複製できるとも思えませんし。それとも………………この鍵自体がすり替えられた偽物か」

「あ、なるほど」


 ぽん、と飯田が手を叩いた。


「それならいろいろ辻褄(つじつま)合いますね」 

「……まぁ、この鍵が偽物かどうかはこれから調べてみますよ」

「え………これからですか?」


 桃ちゃんは、そうです〜と言いながら、とある教室の前に立った。


「げっ」


 俺は思わず嫌そうな声を出した。


「ふっ、これぞ我が学園の最終兵器です!」


 びしぃっ! と教室のネームプレートを指さした。

 そこには『管理室』と書いてあった。


「管理室の監視カメラを見ましょう!」

「うわっ……」


 今までのミステリー感覚が台なしだった。

 ……これで解決されるんならそれにこしたことはないのだが。


「科学って便利ですよね〜」


 魔法じゃ他人の監視はできませんからね〜、と言いながら桃ちゃんは部屋の中に入っていった。













「およっ、どうしたんだい桃先生!」 


 中に入ると、監視員を続けて早20年のベテラン、宮松さんがいた。

 ほがらかな人柄と白髪まじりの髪がいかしてるナイスミドルだ。


「それが大変なんですよ宮松さん!」


 そして資料庫に侵入者がー、なんだってー、みたいな会話を繰り広げる2人。


「へー………」


 その間に飯田が管理室にある大量のテレビモニターを、興味深そうにのぞき込んだ。

 俺も映像を見てみたがもう遅い時間なだけあって、どこも人影がほとんどなかった。


「とりあえず宮松さん、この鍵が偽物かどうか調べてくれませんか」 

「あいよっ!」


 話がついたらしく宮松さんは元気よくそう言うと、部屋の奥に引っ込んでいった。


「さて、私たちも調べましょうか」

「何をですか?」

「監視カメラの映像記録を、ですよ」


 飯田が聞くと、桃ちゃんがパソコン画面から目を離さずに答えていた。

 すると、きゅるきゅると音を立てながら監視カメラの映像が巻き戻されていった。









 そして用事が終わった俺たちは、管理室を後にした。

「………結局、ほとんど何も手がかりがなかったですね」

「………鍵が偽物だってわかったぐらいですね」


 飯田の言葉に桃ちゃんが盛大なため息をはいた。


「しかし、どうやって鍵を盗ったんでしょう?」

「さあ、職員室って意外と隙だらけだから、その隙をねらったんじゃねーの?」


 飯田の言葉に、俺はおざなりに応えた。


「………とにかく、資料庫のドアの修理をしなければいけませんね」


 桃ちゃんには、幼い外見に似合わず悲壮感が漂いすぎていた。


「す、すぐに直りますって!」


 見てられなかった俺は、なんとか桃ちゃんを元気づけようとする。


「……ただ開けるだけで、たぶん3日ぐらいかかると思います」

「………それは、また、かかりますね」

「ええ」


 桃ちゃんは、はぁ〜っと深いため息をつくと、ガクッと肩を落とした。


「夜中に一端校舎全ての電源を落としてこの校舎のセキュリティを全て解除した後、そこからは電磁盤とにらめっこ………」

「にらめっこって………けど桃ちゃんがやるわけじゃないでしょう?」


 桃ちゃんの専門はあくまで魔法であって、コンピュータではない。


「そうですけど、修理してくれる人たちを放っといて、責任者の自分だけ帰れませんよ」


 ぐすん、と鼻をすする桃ちゃん。


「それにあそこのセキュリティは私の魔法も一枚かんでますから、その辺りの仕事もあるでしょうし……」


 ずどーんってな感じで膝をついた。


「あー………」


 どうしよう。フォロー不可能だ。


「と、とにかく泣いちゃダメですよ! 元気出していきましょう!」


 そういいながらも、俺は桃ちゃんにティッシュを渡した。


「ぐずっ、すびません」


 それからまたティッシュを濡らしたのだった。 







金●一とかコ●ンとか大好きなんですが………実際それっぽいの書こうとしてもできませんね。

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