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パニカル!  作者: タナカ
33/98

体育館前




 体育館前。


「さぁみなさん! 戦闘準備はいいですか〜!」


 スピーカーから桃ちゃんの元気な声が聞こえる。


「………んで、なんでお前らがここにいる」

「あー………」


 湊が言いづらそうに頬をかく。

 俺の周囲には湊、八巻、委員長、の他にエル、さっきのヨルフェとかいう女子に、洋太にその友人沢木龍二。そして今井麻衣、D組のにぎやかし要員宮西鞠乃、冷静なつっこみ担当黒部一郎、そして何やらおどおどしている見知らぬD組女子………と。

 4人グループ×3=12人の大所帯になっていたからだ。


「一時的な共闘ですわ」


 エルが済ました顔でそう言った。 


「でなければ、あれの突破は難しいと思いません?」

「………そうだな」


 エルが見上げた先は体育館。

 そこには学生運動を思わせるようなバリケードがしかれてあった。

 椅子、机、スコアボードなどなど。使えそうなものは全て使って体育館に入れないようにしている。

 そしてその上に薄く光る結界が体育館を囲むようにして形成されている。

 どれだけ時間をかけたかは知らないが、作成者たちの根性が伺えた。

 うぉあ。すげー。


「それでは! 12時ちょうどを持ちまして! フラグ争奪戦を開催いたします!」


 時計を確認する。現在11時55分。


「スタートの合図には鐘を鳴らします! それと……」


 桃ちゃんが言葉を区切ると同時に、俺やエルたちの目の前に魔法円が描かれた。

 ん……? と思っている間に、そこからは手のひらサイズの小さな………

 桃ちゃんがいた。


『はいっ!?』


 周囲から驚きの声があがる。

 よく見まわしてみると、俺の傍にいるミニ桃ちゃんはワニの着ぐるみを、エルの傍にいるミニ桃ちゃんは熊の着ぐるみ、そして今井の傍にはキツネの着ぐるみをしたミニ桃ちゃんがいた。

 みな一様にして旗を抱えている。


「1グループに1人いるその子は、科学技術であるバーチャルリアリティと、魔法技術である式神、使い魔の技術を応用してつくられた、いわば科学と魔法の結晶体と呼べる存在です!」


 おいおい、すげーな。何気に最先端。

 俺の傍にいたミニ桃ちゃんは『わにわに……』と言いながら俺の胸の中にぽふっと収まった。

 綿みたいな軽い感触が胸に残る。


「私が作った、第2のバーチャルな私です!

 『バーちゃん』と及びください!」 


『それは嫌!』


 周囲、特に今井から凄絶な拒絶の声があがった。

 ま―確かに。これを「おばーちゃん」なんて呼びたくないわな。


「その子たちが抱えている旗を奪われたら負けです! これから1時間後の1時までにそれを奪われないように気をつけましょう! それでは!」


 時計を見ると、ちょうど12時になるところだった。そして。


 ごーん! 


 とどこぞの寺で鳴ってるような鈍い鐘の音が鳴る。

 鐘ってこれかい。


「スタートです!」

  










 さて、とりあえず現状を整理する。

 この場にいるのは俺らのチーム、エルを中心としたチーム、今井を中心としたチームの3グループ計12人。

 そしてこの争奪戦の敵の半分はあのバリケードが張られた体育館にいる。

 残りの30人弱、つまり約7グループはここ以外の場所で戦闘しているか、もしくは様子見をしているかどちらか。

 ………とにかく。半数が立てこもりをしているこの現状をなんとかしないといけないわけだが。


「まぁバリケードはどうにかなるんやろうけど………」


 湊がぼりぼりと頭をかきながら、「あー」と言った。


「結界も張ってあるんやろ?」

「その通りですわ」

「………どないしょ?」

「どうもこうもないでしょう? 力ずくでいくしかないと思いません? ですからこうして共闘しているのですし」

「せやな」


 と、魔術科の湊とエルが、2人の世界に入っている中。   


「あー、そのごめん」


 今井がおずおずと会話に入ってきた。


「そもそも結界って何?」

「説明しよう!」


 聞かれてないのにズバーン! とでてくる宮西。

 エビ尻尾をふりふりさせ目を輝かせるその姿は、まさにこれこそ我が生き様! と全身で表現していた。


「結界! そう、それは某漫画にも出てくる最強の魔法! 四方を囲み『結』というだけで反則気味の空間が形成ぶっ!」

「あー、はいはい」


 眼がねを光らせた八巻が、いつの間にか取り出したハリセンで、スパァンッ! と宮西を叩いた。

 ごくろうさん。


「んで、本当は何?」


 口が『3』の字になってぶーたれている宮西をひきずりながら、八巻が聞いた。


「ようは壁みたいなものですわね。

 光の初級魔法なのですが、ほぼ純粋に魔力で形成された、あらゆるものを通させない光のことをいいます」


 そう言いながら、エルは指先を俺の方に向けた。

 ………ん?


「クロワシリエ、モンティコル」


 げっ!

 俺は即座に後ろに飛ぶ。


 ヒュワッ


 俺がいた半径50cmのところに、高さ2m弱の光の結界が生まれた。


「危ねーじゃねーか」

「別にあなたを囲ったところで、どうこうしようとは思ってなかったのですが………」 


 じじじ、と円柱の形でできている結界を前に、エルは説明を続けた。


「この結界を壊す方法は2つ。

 1つは形成者である私がこれがなくなるように念じること。

 そしてもう1つは………」


 エルは湊たちを少し結界から離した。


「ヴェナール、ウィンディ」


 エルが呪文を唱えた瞬間、するどい風の矢、俗に言うかまいたちが結界を襲う。


 スパッ


 そんな気持ちいい音をたてて、結界が霧散した。


「結界形成時以上の魔力を帯びた魔法をもって、外部から結界を破壊すること」

「………これ、中にいる人間まで被害が出ない?」 


 八巻が冷や汗を流しながら聞いた。

 てかその結界の中に俺がいたら、今ごろまっぷたつだったじゃねーか。


「ま、この程度の危険は覚悟してもらいましょう」


 エルは体育館を見上げて言った。










中の人間、オワタ\(^o^)/

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