表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パニカル!  作者: タナカ
24/98

湊爆発!





 午前8時15分。

 あと10分程度で出なければいけない時間なのだが………


「いやー、おおきに大家さん!」

「いえいえ。ゆっくりしていってね」

「………………」


 当然のように湊がテーブルに居座っていた。


 さて、もう一度この関西弁女を紹介しよう。

 谷口湊。魔術科2−D所属。新聞部部長。

 ぼさぼさの髪と童顔から、一見無邪気な少年に見える。 

 ………が。

 こいつの本質はそんなかわいいものじゃない。


「あ、食器片付けるの手伝いますよ、大家さん」


 食器の片づけを手伝うふりをしてさりげなく野原さんに近づく。


「あら、ありがとう。でも私1人でも大丈夫よ。だから湊ちゃん、そんなこと気にせずにくつろいでいて……」

「いやいやってぇおおーっと! 足がすべったぁ!」


 そして足がすべったふりをして、


 ぽよん


 野原さんの豊かな胸に顔をうずめた。

 ………谷口湊。性別は女だが、性格は親父である。


「あっと、気をつけてね。転んで怪我でもしたら大変だから」

「わかりましたぁ………んーっ!」


 野原さんの言葉もろくに聞かずに喜色満面で顔を胸にうずめる湊。

 存分に胸の感触を楽しんでいた。

 そして野原さんの腰や尻に手を回そうとしたところで………


「はいはい。とっとと離れろ」


 俺は湊をつかんでべりっと引き剥がした。


「ああんっ!」


 すっごく名残惜しそうな声を出す湊。

 はなせー! とじたばたしていたが、野原さんが「気をつけてねー」と言いながらキッチンに戻って行くと、抵抗を諦めた。


「何すんねん、まーやん」

 

 がおう、と吼える湊。


「昨日まで寺で修行してたくせに、ひとっつも治ってねーんだな、その煩悩は」

「ウチと煩悩は常に1つや! 煩悩が消えるときは、ウチも消えるとき!」


 なんつーアホな理論だ。

 キッチンに行った野原さんの方を見て、湊はよだれを垂らした。


「ぐへへへ………えーなぁ、あの尻は。ぷりっぷりしとって。知っとるか、まーやん。胸に欲情を覚えるんわな、胸の膨らみが尻を連想させるからなんやで。つまり! 尻は全ての欲情のもとなんや!」

「………さて。そろそろ学園に行くか」


 こいつのエロ談義につきあってたらキリがない。


「ぐふふ……ウチはまーやんでもええんやけど。その無駄を捨てさってきゅっと引き締まった肉体には悠久のエロを覚えずにはいられへみぎゃ!」

「アホ」


 なんか手をのばしてきた湊に、俺は裏拳を一発おみまいした。










 学校前の下駄箱前。

 予鈴のチャイムはさきほど鳴った。

 辺りには遅刻ぎりぎりなので走って登校している生徒たちが目だった。

 ……そんな中。


「あたた………まーやんのいけずー!」

「うるさい」


 ひたすらまとわりつこうとしてきた湊を殴りながら登校した。

 その時だった。


「ん………?」


 俺はちょっとした違和感を感じて、立ち止まった。

 思わず周囲を見渡すが、これといって変なところは見当たらない。


「ん? どないしたんや、まーやん」


 湊が下駄箱前で不思議そうな顔をしている。


「………いや」


 気にしてもしょうがないか、と思いなおして俺は下駄箱に行った。

 靴を履き替え、教室へ行く。


 すると2−Bと2−Dの教室で、何やら人だかりができていた。


「なんや、あれ」

「どーした?」


 俺は近くにいた洋太に声をかけた。


「おお、魔ーと……ぶ、部長!」


 おおお! とまるでどこぞの王様が帰ってきたかのような反応をする洋太。


「帰ってこられたのですね!」


 なんか土下座しそうな勢いだ。


「ふ………心配かけたな、上野。だが安心しい。ウチが帰ってきたからには新聞部は無敵や!」


 湊もノリノリで答える。


「んで、何やこの人だかり?」


 そしてすぐに素に戻る湊。   


「おお、そうでした! 見てください!」


 洋太が2−Bのドアの方をびしぃっと指差した。

 そこのガラスには1枚のプリントがセロテープで止めてあった。


『B組のみなさんはくじを引いて、そこに書かれてある場所に行ってください。 西村桃子より』


 そしてドアの近くには、ダンボールで作られたくじ引き用の箱があった。


「ん〜………?」


 見ながら首をかしげる湊。      


「さきほど私もくじをひいてみました。結果、『生徒指導室』と書かれていたので、恐らくそこに行けばいいと思うのですが………」


 ………どうでもいいがいつまでその口調なんだ、洋太。


「なるほど。ところで、A組やB組、E組の生徒らは?」


 湊がA組の教室を覗き見ながら言った。

 そこは朝のHR前だというのに、教室の中には誰もいなかった。


「それが見当たらないのです。それどころか他学年の生徒や他の先生方も見当たらなくて。いるのは我々2ーB、D組の生徒たちだけみたいです」

「ふーん」


 湊は他のクラスを覗き込み、そしてD組の方に行ってドアを見る。

 そしてすぐに戻ってきて「こっちもくじ箱置いてあった」と言った。

 手にはついでに引いてきたくじを持っていた。 

 くじには『図書室』と書いてあった。


「………ま、とりあえず紙に書いてある通りに行動すりゃいいだろ」


 俺はそう結論付けると、ドアの前にあるくじ箱に手をつっこんだ。


「………………」


 くじには『図書室』と書いてあった。








レポート終わった―――!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ