表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パニカル!  作者: タナカ
19/98

世界の破壊



 今井のフレアと闘技場を埋め尽くしていた氷柱がぶつかったことにより、俺の思惑通り氷は消えた。

 ………が。

 同時に氷と炎の接触で、鼓膜が破れそうなほどの音がした。

 ほら、あれだ。熱したフライパンに不用意に水を入れた時の音。じゅわって。あれを何10倍も大きくした音だ。


 そして視界を埋め尽くすほどの水蒸気を見て、ぽりぽり頬をかきながら今更思った。

 あー………やりすぎた。

 俺は闘技場の隅っこぎりぎりまで避難していた。


「ぶわっ! だあああ! 催涙ガスか!?」


 とか騒いでるアホアナウンスは置いといて。

 ここまで視界が真っ白だと、肝心の(ひょう)がどうなってるのか分からない。

 真冬に温泉の煙にあてられているような気分になりながら、俺は煙の中を見渡した。


 さて………敵さんはどこにいるのか。

 …………な?


「げ!」


 バッ!


 突然目の前で魔力が集中するのを感じた。

 俺は急遽後ろに飛んで、観客席に避難する。

 そしておぼろげだった視界が徐々に晴れていくと………


「………おいおい」


 俺は思わずそんな言葉をもらしていた。

 闘技場の中央。マリア像が立っている場所の横に雹がいた。

 目を閉じ、グレイスの杖を持って


「コントレィーベイルマスフェイトエタネティグレスェトラージュヴィエラ………」


 と何やらぶつぶつ呪文を言っているようだ。

 ……そしてその声に呼応するかのように周囲の水蒸気を片っ端から。

 氷に変えていた。

 その氷は雹の周りで巨大なクリスタルのような形をなしている。

 雹自身は氷付けにされた姫君のように、その氷柱の中で口以外は1つも動いていない。  

 なかなか綺麗ではあるのだが………


「これはさすがにまずいですねー」

「って桃ちゃん?」


 いつのまにか隣にいた桃ちゃんが、唸りながら言った。


「見てください」


 桃ちゃんはおもむろに近くの柱をコンコン、と叩く。


 ボロッ……


 まるで何千年もの年月が経っているかのように、柱がもろくなっていた。


「私たちが作ったこの空間に干渉しているみたいです。呪文からして恐らくこの空間を力ずくで氷の世界に変えるつもりみたいですねー」

「いや氷の世界って……」

「んー……南極とか北極みたいな場所ですかね」

「……なるほど」


 南極か北極かー。寒いのは嫌だなー。


「……にしても桃ちゃんや先生、生徒たちの魔力がつまったこの空間を、そうあっさり改変できるんですか?」

「普通はできませんよ。私たちがつめた以上の魔力が必要になりますから」


 つまりは桃ちゃん+先生方+2年A、E組の生徒たちの魔力。

 それ以上、と。

 どんだけ魔力持ってんだあの無口ドS娘は。


「……………………なるほど。だったら………」

「……? 桃ちゃん、どうしました?」

「いいえ」


 何ごとか呟いた桃ちゃんは、腰からいつも携帯している小刀の形をした宝剣を引き抜いた。


「とにかく雹ちゃんを止めます。私は外郭(がいかく)の、あの氷のクリスタルを破壊しますから、魔ーくんは中の雹ちゃんをお願いします」

「了解」

「頼みましたよ」


 珍しく真面目な表情の桃ちゃんは、闘技場の雹に向かって飛び出した。 


 ドンッ!


「速!」


 小さな体躯に似合わず桃ちゃんは瞬時に雹の近くまで到達した。


 トッ!


 俺も慌てて桃ちゃんを追う。


「あ………」


 空中疾走中になんだが、今、気づいた。

 ルミナスの剣、どっかに捨て置いたまんまだ。


 少し視線を巡らすと、俺の宝剣はここから雹をはさんで対極の場所、闘技場の隅にあった。

 ……あれ取ってたら、時間無くなるよなー。

 ………………しょうがない。


 俺は思考を切りかえ、肉弾戦で雹を止めることに決めた。

 肉体強化だけなら、例え呪文が使えなくても体内の魔力コントロールだけでどうにかなる。

 ………ただ、剣がないのはさすがに心もとないが。


「は!」


 ギョン!


 桃ちゃんが裂帛(れっぱく)の気合と共に、固そうな氷の塊を切り裂いた。

 俺はその隙に桃ちゃんの横を通りすぎながら、

 とりあえず雹を一発殴る!

 と、そう考える。

 そして薄くなった氷の塊の中にいる雹の頭を、

 思いっきり殴った。







***


 





 だが、予想していた感触はなかった。

 いうなれば泥沼に手を突っ込んだような、そんな感触がした。


「な………!」


 俺の拳が雹にぶつかる直前。

 どこまでも続いていそうな闇が、俺の腕を包み込んでいだ。


「魔ーくん!」


 桃ちゃんの悲鳴が微かに聞こえ、それを最後に。

 俺はその闇の中にひきずり込まれていった。 








………こうして、魔ーはやられたのだった。完!


冗談ですよ! まだまだ続きますからね!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ