ネッカーキューブ
ネッカーキューブ
美しいものを壊したい。
彼女はそんな僕の想像にぴったりすぎた。
彼女はそういった女だった。
彼女は決して出しゃばるような人間ではなく、
まず、自ら喋ろうなんてしないようなやつだった。
僕はそんな彼女に憧れていたのだと思う。
彼女の髪、彼女の指先、彼女の目、
その全てがどうしようもなく美しかった。
初めて話しかけた時、
彼女は警戒しながらも、
僕を真っ直ぐ見つめてくれた。
それだけが腫瘍のように、胸の中に残っている。
だけど、それを守ろうとか、
縛ろうとかしたいんじゃないんだ。
ただ、
ただ、
あの子のあの笑顔を少しだけ壊したいんだ。