校内3位の美少女。
温かい目で見て頂ければ幸いです!!
ある日の夕刻。
窓からは薄く夕日が差し込んでおり。とある少女の、整い過ぎている顔を紅く染めていた。
少女の現在の場所は教室。
教室内には少女を含めた生徒二人しかおらず、そのもう一方の男子生徒といえば、少女に背を向けてロッカーをガサゴソと弄っていた。
男子生徒は緊張していた。
今現在、自分の後ろにいる少女は校内で2番目にランクインする美少女なのだからだ。
1位じゃねえのかよ! とツッコミたくなるかも知れないが、そこは我慢してほしい。
この学校には8人の美少女達がいて、その全員が神格化されているのだ。中でも、1、2、3位は特にレベルが……格が違い。その順位に大きな差は無い。
つまり男子生徒は、女神に尻を向けている事となるのだ。……しかも、夕方の教室に二人きりで。
そんな状態で緊張するなという方が可笑しい。
片や一方の少女も、心臓をうち震わせながら緊張していた。
少女はこれまでの人生の経験から、自分が他人よりも綺麗で可愛い自覚があった。
自分が影で“美少女”と呼ばれている事も知っていたし、校内で2番目にランクインしている事も知っていた。
告白された経験は50にも及び、ストーカーされた経験も1回や、2回ではなかった。
だが、少女は自分から告白した経験が無かった。
その結果、目の前にいる男子に好意を伝えようとしている今現在。極限まで高まった緊張が少女の行動を静止させていた。
先程述べた通り、少女は自分がモテている、美少女である自覚がある。
その上で、きっと大丈夫。上手くいく。と考えていた。……そう考えていたのだ。
だが告白直前になって、そんな事が何の保証にもならないと思い直し、失敗したら……。等と不安を増殖させていたのだ。
妙な雰囲気が教室を支配する。
男子生徒は、美少女といることの緊張。
少女は、好きな男子に告白することの緊張。
似ている様で全く異なる。似て非なる想いが交差しあい、妙な雰囲気を醸し出していた。両者共に下手には動けなくなってしまっており。それは、武士の居合いの様でもあった。
沈黙。
その沈黙は、少女にとっては好きな男子と、夕暮れ時の教室で二人きりという特別なシチュエーションで。心地良いものだったのだが。それに勝る極度の緊張が少女の思考を埋め尽くしていた。
もう一方の男子生徒にとっては、全校生徒の憧れの美少女と夕暮れ時の教室に、二人きりというシチュエーションが、一般的な男子高校生として、ドキドキが止まらなかった。
少女にとっての、男子生徒は個人を指すのだが。男子生徒にとっての少女は、校内で2番目にランクインする美少女。という風に個人を指すものでは無かった。
ーーーそこが少女と男子生徒の、意識の違いの明確な差であった。
このまま事態は一向に変化しない様に思えたが、ある第3者の突入によって大きく変わることになる。
ガラガラと音をたてて教室に入ってきたのは、言葉では形容出来ない程の美少女だった。
教室にいた少女と、男子生徒は、音のする方を向く。すると、両者共に驚きと驚愕の表情を浮かべた。
校内ランキング1位が入ってきたのだから。
入ってきた美少女に対して、少女は驚いていた。何故、彼女が今、この場に入って来たのかと、その上で少女は何となく状況を察してしまった。
彼女も男子生徒の事がーーーーーー
また一方の男子生徒は、少女よりも驚愕の表情を浮かべていた。
こんな事が現実に起こり得るのかと、実は自分は今ベッドの上で寝ていて、これは夢と言われた方がよっぽど現実味があった。
またまた一方の、現在扉の前に立っている美少女は困惑していた。
何故ならば、自分と同じ美少女と呼ばれている、少女がいかにも告白しようとする格好と雰囲気だったからだ。
そして実際、彼女もまた男子生徒の事が好きだった。自分は美少女。誰よりも綺麗で可愛いという自信があった。
しかし、彼女は不安だった。男子生徒が誰かにとられてしまうので無いだろうかと。そこで告白することにした。
自分は校内で1番の美少女なのだから、他の女子よりも自分を選んでくれる。そう思っていた。……なのだが、どういうわけか今目の前にいる、校内で2番目にランクインしている美少女も彼の事が好きそうなのだ。
こんな思考が、さらに交差している時。
男子生徒は、安心しきった顔を浮かべた。何故ならば、彼の探し物ーーー彼女のプリントを見つけたのだ。
そう、この男子生徒には彼女がいる。
それは少し考えれば直ぐに気付く筈の事だったのだが、緊張や不安。様々な思い持っていた少女達は気付かなかった。いや、気づけなかったのだ。
そして、さらに第4者の突入の瞬間となる。
先程の美少女が入ってきた扉とは異なる、教室の後ろ側の扉を勢い良く開けて入って来たのは、校内ランキング3位の美少女だった。
その美少女は一直線に男子生徒の元へと向かい、満面の笑みを浮かべる。
「しょーう君っ!探し物の見付けてくれた?」
「ん、ああ。あったよ。今度からは無くさないでね」
「うんっ! じゃあ一緒に帰ろっ!」
男子生徒の手をとると、廊下の方へと歩いていった。そして残された方の少女達の方を一瞬向き、フフン、と勝ち誇った笑顔を残すと去っていった。
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