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無限の異世界救世譚  作者: カイロ


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第八話 アイロネスへ!②

 いつまでも続いたような、瞬く間の事であったような、暗闇の中に閉ざされていた兵真の意識がいつの間にか戻ってきていた。

 ハッと目を見開き起き上がる。右足に視線をやると、傷が跡形も無く消えている。気分も先程までの不調が嘘のように爽快だ。


「お、俺は……?」

「うぅっ、ヘイムぅ……ごめん、ごめんよぉっ……!」


 兵真が意識を取り戻した事に気付き、リンフレッドは涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにし、嗚咽を上げながら兵真に抱きついてきた。


「うおっ!? や、やめろってリン! な、何すんだよ!?」

「アイツが毒を持ってるなんてっ、しらなかったんだよぉ……! 何でも、何でもするからっ。一生お前の為に尽くすから許してくれよ、ヘイムぅっ……!!」


 リンフレッドはさらにぎゅっと兵真の事を抱き締める。これが女の子だったら兵真もお言葉に甘えた所かもしれなかったが、男相手ではちょっと気持ち悪かった。


「いや、いい! いいからそういうの! 何でもしたり尽くしたりとかしなくていいから! 普通に今まで通りに接してくれてていいから!」

「でっ、でもよぉ、ヘイム……」

「いいんだって! 別に俺が死んだわけじゃねぇし、俺の為にリンが涙を流してくれたんだからもう俺はそれで許すよ!」

「ヘイム……」


 兵真がもう許したと言うと、リンフレッドはようやく泣き止み、抱き締める手を緩めた。その隙に兵真は素早くリンフレッドの腕の中からすり抜ける。

 兵真の方も敵の息の根を確実に止めたと思い込み、慢心していたのだ。何もリンフレッドにだけ非があるわけではない。


「ところで……俺の足の傷が消えてるんだけど、これって誰がやってくれたの? レイニーさん……は違うよね、多分回復魔法なんだろうけど使えないんでしょ?」

「えぇ。私じゃないわ」


 レイニーに尋ねるとクスクス笑いながら首を横に振る。じゃあこの傷は誰が治したのだろうか。

 そして今気が付いたのだが兵真たちは回復薬とかそういう傷を治せそうなものを買った覚えがないのだ。いずれ魔王との戦いに挑むとなれば傷など絶えないだろうし備えはしておくべきだったのに何も買っていない。

 自分は勇者なのだから怪我などするわけない、と思っていたのだろう。その結果たった今まで死に瀕していたのだが。

 ともかくそうなるとリンフレッドも違うだろう。あの様子ではずっと泣き続けていたようにしか兵真には見えない。

 ナナフサも違うだろう。傷を治せる魔法が使えるのであれば罠から助け出した時に使っているはずだから。

 そうなると、残るは一人だ。


「ムツミ、俺の事助けてくれたんだな。ありがとう」

「……別に、お礼とかいらないから」


 兵真と視線を合わせぬようにムツミはそっぽを向いていた。

 できれば兵真は頬を染めながらそんな台詞を吐いてくれたら嬉しかったのだが、ムツミの顔色は平静を保っている。


「回復魔法が使えたんなら早く言ってくれればよかったのに。俺さっきまでマジで死んじゃうのかと思ってすごい怖かったよぉ」

「……怪我治したりとか毒消したりとか、あと一応攻撃魔法も使えるんだけどね。……正直言うとヘイムが死んだらわたしも自由になれるし、あのまま黙ってようかと思ってたんだけど」

「なるほど、それで俺への恋心に気付いて助けてくれたわけだね!」

「いやそういうのじゃないから。……服、買ってもらったし、お礼も言わないで見殺しって良くないと思ったから。それだけ」


 そう言うムツミの顔色はやはり普通と同じだ。セリフはツンデレっぽいんだけどなぁと心の中で兵真は思う。


「まったまたぁ。そんな事言って本当はそろそろ俺に惚れ始めてたりとかしたりしない?」

「まさか。嫌いって言うほどでもないけど好きってわけでも無いから」


 バッサリと斬られてしまった。まあ兵真としてはただ反応を返してくれるだけで嬉しいので特にダメージは受けていないが。


「手厳しいなあ。ま、なんにせよムツミが俺の事助けてくれたのは本当に嬉しいよ。改めてありがとうな」

「ああそう。……うん、まあ素直にお礼言われるってのは悪い気はしないし、今後もみんなが怪我したら治してあげよう、かな」


 兵真が感謝を述べて手を差し出すと、一瞬躊躇おうとしたがムツミも手を出して握り返す。

 やはりツンデレっぽい台詞を吐くムツミであったが、照れたりする様子は見られないのではたから見ればイマイチ萌えにくかったが、兵真にはなかなかぐっと来た。

 ナナフサ、リンフレッドと共に二人の様子を少し離れて見守っていたレイニーは「若いっていいわねぇ」と楽しそうに呟いたのであった。

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