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無限の異世界救世譚  作者: カイロ


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第四話 スタールへ

 スタールを目指し旅をする兵真たち一行は魔物との初めての遭遇を果たした。

 初めてとは言っても兵真は一度見ているし、リンフレッドも村まで来た魔物を他の村人と協力して追い払ったりはした事があったが、戦闘を目的としての遭遇が初、という意味だ。

 魔物の毛皮や牙、爪などの体の一部を商人に渡せば換金してくれたり、武具屋に持っていけばそれらを素材として装備品をあつらえて貰ったり武具を安く購入させて貰えるとリンフレッドより聞かされ兵真は非常にやる気が出ていた。

 兵真たちの前に現れたのは、兵真に苦い想い出を作ったゴブリン。あの時とは違い手にしているのは棍棒だが、それが三匹。

 また不意打ちされでもしない限りはやられる事はないだろうが、決して油断はできない。兵真は村で買った剣を握り直した。

 あの謎の男から貰った剣を持っていないのは、そちらはナナフサに与えたためだ。振り心地が気に入ったらしく、ねだるような素振りを見せたので装備させてやると口だけで鞘から抜き放ち華麗に振り回して再び鞘に収めてみせた姿は実にさまになっていて兵真はちょっと悔しかった。


「ヘイム、俺が右のを片付けるから真ん中の奴は頼んだぜ」


 そう言ってリンフレッドは拳を固く握り締めて構える。

 リンフレッドの武器は、その自らの拳だった。剣を振るよりも自身があるとの事で、昔イノシシを仕留めた経験もあるという話だ。


「よっしゃ頼まれたっ! じゃあナナフサは左をやってくれ!」

「ウォン!」


 ナナフサの返事を聞くと同時に二人と一匹は一気にゴブリンとの距離を詰めた。

 三匹のゴブリンはそれぞれ反撃せんと棍棒を振りかぶるが、全て遅い。

 リンフレッドの拳がゴブリンを胸を捉え大きく吹き飛び、兵真の振り下ろした剣が自分の前に居るゴブリンの棍棒をもった腕を切り裂き、ナナフサが正確にゴブリンを首を切り落とし、すぐさま兵真が腕を斬り飛ばしたゴブリンの首をも刎ねた。

 そのままリンフレッドと兵真は吹き飛んで気絶していたゴブリンの元へと向かうが二人の到着より早くナナフサが駆け抜け、ゴブリンの首へと剣を振り下ろした。


「……」

「……」

「ウォン!」


 ナナフサは剣を鞘にしまうと、嬉しそうに尻尾を振りながら三つのゴブリンの首をくわえて兵真たちの前に座り込んだ。


「……なあ、ヘイム。怪我なく勝てたのはいいんだけどさ、俺なんか釈然としねえ」

「うん……俺もなんか初陣を勝利で飾れた割にあんまり嬉しさがこみ上げたりとかないな……」


 おいしい所をナナフサに持って行かれがっくりとうなだれる二人ではあったが、ともかくナナフサが活躍した事は褒めてやらないとと考え頭を撫でてやった。

 尻尾を振り喜ぶナナフサを見ながら、まあこうなる事も仕方がないだろうという思いは兵真にもリンフレッドにもあった。

 なにせナナフサは今まで野生の中に生きていた狼なのだ。実践の経験など二人に比べるまでもないし、強いのも当然だろう。


「……ヘイム、強くなろうな」

「……そうだな」


 わかっていたとは言え、自分の上げた戦果が動物に負けると悔しいもので。二人はいつかもっともっと強くなって、ナナフサよりも活躍できるようになろうと決意を交わす。

 その後リンフレッドからゴブリンは爪と牙が換金できる部位だと教えられ、兵真はリンフレッドと共にそれらを剥ぎ取ってから再び町を目指すのであった。


 ゴブリン三匹との遭遇以降、兵真たちは特に魔物と出会う事なくスタールの町へとやってきた。

 リンフレッドの住んでいた村は静かだったが、スタールは静けさなどまるで感じさせない。とにかくいたる所に人がいる。


「すげえな、アキバくらい人がいるんじゃねえかここ」

「アキバ? ヘイムの故郷か? ……まあともかく、こんだけ人がいるんだし俺らの旅に付いてきたいって奴も何人かはいると思うんだよ」

「確かにそうかもしれないけど、こう多いと逆に探すのも苦労しそうだな……」

「おっと、その心配はいらねぇぜ! 俺は過去に何度もここに来た事があるってのを忘れてもらっちゃ困るぜ」


 人が少なければそもそも人を探すのが難しいが、かといって人が多ければ今度は目的の人を探すのが大変だ。兵真が仲間集めにも時間がかかるかと思っていると、リンフレッドが待ったをかける。


「おっ、ってことは戦闘の専門家の集まる場所とか知ってるのか? 冒険者ギルドとか!」

「ギルド、ってのは知らないが、近くに酒場があってさ。そこに強そうな人らが集まってんのよ!」


 兵真がそれにへぇと返すが、リンフレッドの反応に内心落胆していた。異世界と言ったら冒険者ギルドだろう、という考えを持つ兵真は知らず知らずの内に溜息をこぼしてしまう。


「無いのかな、冒険者ギルド……。じゃあ、奴隷市場とかも無いのかな……残念だ」

「ん? ヘイム奴隷市場に興味あるのか? それならあるぞ」

「マジでッ!?」


 奈落の底まで落ちていきかけた兵真のテンションだったが、リンフレッドの言葉に光の速さで戻ってくる。

 異世界特有の美人奴隷と共に世界を救う。それもまた、兵真の夢のひとつである。キラキラ輝く目で兵真はリンフレッドを問い詰めていた。


「どの辺!? どの辺にあるんだ!?」

「うわっ!? 落ち着けってヘイム! こ、こっから北西の方に……」

「よっしゃわかった! じゃあいい感じのコ見つけたらそこの宿屋で集合な!」

「えっ、ヘイム待てって! まだ正確な場所も言ってな……ああ行っちゃったよ」


 方角を聞いただけで兵真はすぐさま人ごみの中を駆け抜けていき、すぐに見えなくなってしまった。

 取り残されたリンフレッドとナナフサは互いに顔を見合わせる。


「キューン……」

「ま、まああれくらい元気が有り余ってないと勇者に選ばれたりしないって事、だよな。仕方ないか。行こうぜ、ナナフサ」


 いきなりの兵真の単独行動ではあったが、仕方ないとリンフレッドは首を振る。

 自分も自分で酒場についたら好みのタイプの女性にばかり勧誘をするつもりだったのだし、ここで兵真を責めるような事はできない、とリンフレッドは考える。

 それに、もしかしたら兵真の好みが奴隷の女の子なのではなく単純に裏切る事のない戦力を欲しての行動かもしれない。

 まあ、実際がどちらであったにせよ兵真の判断は間違っていないのではないか。特に理由も無くリンフレッドはそう思い、ナナフサと共に酒場を目指す。

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