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無限の異世界救世譚  作者: カイロ


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第三十七話 再戦! 四天王フロステール

 次に兵真達の行く手を遮ったのは、魔鉱山で出会った四天王。

 右腕に白色の宝石の嵌め込まれた黄金の手甲を装備していた方、フロステールだ。


「あら、まさかまた会うとは思わなかったわ。前より数が減ってるみたいだけど、あの二人に倒されたのかしら?」

「んなわけねーだろ。その内俺達に追い付くさ。……それよりまた会うと思わなかったはこっちのセリフだ。お前確か生き埋めになったはずじゃあ……!?」


 以前に四天王の二人、フレーシスとフロステールに魔鉱山で戦闘になった際にレイニーのブラストマジックで鉱山を破壊し、その崩落に巻き込まれたはずのフロステールは腕組みをして兵真達の目の前にいる。

 ということは、おそらく。


「目論見がはずれたようで残念だったわね。私もフレーシスも無事に戻ってきたわよ。もしかして、アレで倒せたと思ったのかしら?」

「倒せてれば良かったんだけどな。俺無敵のバリアを破る方法とか結局思いつかなかったし」


 倒せたとまでは兵真は思っていなかった。そもそも生きている前提の作戦を立てていたのだから当然そうなるが。

 四天王を名乗る以上は鉱山が崩れた程度ではもしかしたら死にはしないのではと思っていたが、欲を言えばあのままやられていてほしかった。

 ハッタリでもなんでもなく、兵真はフロステールを倒す方法が思いつかなかったからだ。


「そう、思いつかなかったのね。それも当然だわ。だって破る手段なんて無いんだもの。どんな衝撃からもどんな重圧からも私の魔導障壁は絶対に守ってくれる。だからあの時も落盤に潰されずに生きて戻って来られたのだもの」


 そしてフロステールは兵真を肯定する。文字通りの無敵の守りは決して貫けないのだと。

 ということは、ここでフロステールの相手をさせるムツミかレイニーのどちらかに、絶対に勝ち目の存在しない戦いをさせることになる。

 始まる前から押し負けるのが確定した戦いに、仲間を挑ませたくない。

 ムツミもレイニーも大切な仲間だ。そんなものに挑ませるくらいなら、いっそ自分が。兵真がそう思い始めた時。


「ここは、アタシの出番ね」


 悩む兵真の前に、レイニーが出る。

 自身有り気に背中を見せるレイニーに、勝算はあるのか、と問いかけようとするが、兵真はそれは言わずにムツミの手を取る。


「……必ず、後で会いましょう」

「ん」


 否定でも肯定でもない曖昧な返事を返された。どっちだ、とも言いたくなるが、聞きたくない答えが返るのを恐れて兵真はそれ以上言葉を続けない。


「困るわねぇ、そんな私を突破できる前提で話されたら。この私を前にして、ここから先一歩でも進めると――」


 フロステールの言葉を遮り、その背後で爆裂音が響く。

 レイニーのブラストマジックで破砕された床が弾丸となって襲う、が、それは展開された魔導障壁を破ることは敵わず弾かれる。

 しかしそれは構わずレイニーはフロステールの周囲をひたすらに爆破する。

 爆砕された床石は粉々になって煙のように宙を舞い、魔導障壁に守られたフロステールを包み込む。

 数十秒ほど続いた爆裂は、部屋全体を煙で埋め尽くした。それと同時にレイニーも魔術の行使を停止する。

 舞い上がる粉は次第に薄まり、魔導障壁の中でそれを確認したフロステールはだからぁ、と呆れて口を開く。


「言ったでしょ、無敵なの。不意打ちだろうが全方位攻撃だろうが、この魔導障壁は破れないの」

「ええ、無意味だったわね、アタシの攻撃って」

「なんだ、わかったのね。ま今更わかっても許したりはしないけど」

「本当に、無意味だったわ。それがただアナタにダメージを与えるためだけにしたんだとしたら」

「……うん?」


 意味深なレイニーの言葉に、フロステールは眉をしかめる。

 そして視界がほぼ元に戻り始めてようやくその意味を理解した。


「ッ! 一人だけッ!?」


 レイニーの周りには、誰もいない。

 フロステールがぐるりと周囲を見れば、すでに自分の後方の扉が開かれている。


「そして、こうすればッ!」


 レイニーの言葉と共に、開かれた扉の周囲が爆散する。

 衝撃で壁が崩れ、そのまま扉は瓦礫によって閉じられる。


「これで、二人を追えなくなったアナタはアタシの相手をするしかないって訳。どうかしら、ここから先は一歩も通さないなんて言おうとした割にあっさり突破された気分って」

「……聞きたい? でも聞く必要なんてないわよ。これから格好つけて残ったのに私に傷すら付けられずに終わるあんたはすぐ似たような気持ちになれるから」



 兵真とムツミの去った部屋で、レイニーとフロステールは睨み合いを続けている。

 レイニーは隙が生まれる瞬間をただじっと待つが、無敵の防御手段はあるものの、攻撃できる方法は無いのか少ないのかフロステールは仕掛けようとしてこない。


「どうしたのよ。一人で残ったからには何かしら私の魔導障壁を破る秘策でも用意してあるんでしょ? 試させてあげるから、やってみなさいよ」


 手甲を構え、フロステールが魔導障壁を展開する。あまつさえ破れるものなら破ってみろと挑発さえしてみせた。

 恐らくレイニーはただ時間を稼ぐためではなく、魔導障壁を破り自分を討つつもりなのだろうと考えたのだ。

 きっとそのためには周囲に仲間がいては困る。だからあえて単独での戦いを挑んだのだろう、とフロステールはそう考えた。

 だが、どんな手段を用いようと決して魔導障壁を貫くことはできない。フロステールはそれを知っている。

 以前、この魔導障壁で神を名乗る者の神代の魔法すら防ぎきってみせた事があるから。

 だから決して突破できない。神すら用意に上回る力を用意したとて、フロステールは無傷でいる自信があるのだ。

 レイニーがどんな策で挑んでくるのかはわからない。だが、この魔導障壁は全ての策から自分を守る。そして一つの傷すら付かぬことによってにお前の無力を教えてやる。

 そんな思いを込めた挑発に、レイニーは。


「あら、そんなものをアタシが用意してるだなんて思ってるのかしら。無いわよ。魔導障壁を破る手段だなんて一つたりとも持ち合わせてなんてないわ」



「……は?」

「だからぁ、無いってば。アナタの言う通りにそれは無敵なんでしょうね。きっと、いいえ確実にアタシが全ての力で攻撃しても破壊だなんてできないわ」


 フロステールは困惑した。レイニーが何の策も持っていないことに。

 相手の握り締めた希望をいくらでも打ち砕いてやるつもりだったのに、始めからレイニーは希望など持っていなかったと言うのだ。


「まあアナタの魔力が切れたら障壁も出せなくなるってならそれを狙ってみようかなって思ったけど、そういうのでもないんでしょう?」

「……ざ、残念だったわね。これは私の魔力じゃなくてこれに宿ってる魔力で展開してるからやろうと思えばほぼ永久に出し続けられるのよ」

「あーそうよねやっぱり。世の中ってあんまりうまくいかないものね」


 言うがさして落胆した様子もなく、知ってましたとレイニーは肩をすくめる。


「さて、それじゃあどう頑張っても壊せないと分かった所で、ヘイムとムツミが目的を達成するまでアタシと遊んでてもらおうかしら」



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