第三十二話 再戦! 四天王グランハンド
大扉の先へと進みしばらくした兵真達の前に、再び同じような造りの扉が現れた。
意を決し扉に近付くと、触れてもいないのに自動的に開いていく。
兵真達がそこを通り抜け終わると、扉は再び勝手に閉じる。
そして、先程兵真達が居たのと同じような広間の中央には、褐色の肌と白髪の男が腕組みをして待っていた。
「ここまで、来やがるたぁなぁ……」
呆れか関心か、グランハンドはそう呟くと兵真達へと視線を上げる。
「正直どっかその辺でくたばるだろうと思ってたんだが、全員揃って無事とは驚いたぜ。ま、これはこれで構わねぇさ」
腕組みを解き、グランハンドは拳を構える。
「あん時よりぁマシにはなったんだろうし、ちょいと手合わせしようじゃあねぇかぁッ!!」
グランハンドが全身に力を込めると、その場で見えない爆発が起きたかのような衝撃波が生み出される。
兵真も先制を許すまいと剣の柄に手をかけ抜こうとするが、それをリンフレッドが手で制し、前に出た。
「なっ、リン! 何のつもりだよ!?」
「心配はいらねぇぜヘイム。こいつは、俺一人で倒す」
リンフレッドの言葉に、兵真と仲間達は困惑する。
「はぁ!? 何言ってんだよリン! 前は全員で挑んでも勝てなかったってのに、お前一人でって……!」
「へっ、確かに前は駄目だったな。けどさ、こうすればヘイム達は戦闘の疲労を残さず先へ進めるだろ?」
「それはそうだろうけど! お前が直接魔王をぶん殴りに行かなくていいのかよ!」
「だから心配いらねぇって。こいつを倒してすぐに追いついてやるさ」
「なんでだよリン、なんでそんな絶対死ぬような事言うんだよ!」
「ええええ俺追い付くって言ってるのに!?」
残り、一人戦うと言うリンフレッドの説得を試みた兵真だったが、リンフレッドの意志は固く、折れるのは兵真だった。
わかった、と兵真が静かに頷いたのを見たリンフレッドはグランハンドに向き直る。
「そういう訳だ。あんたには俺と戦ってもらうぜ」
「一対一か。いいぜぇ、俺の大好物だ。……そんじゃあ俺からの青髪のお前の勇気と無謀に免じてサービスしてやる。後の奴らは先に進んでいいぜ」
言って、グランハンドは兵真達に道を譲る。
「ま、精々カイン相手に奮闘する事だな。あいつも俺ほどの力ぁ無いがなかなかやるぜ」
「おいおい先に行かせてくれるだけじゃなしに次に待ってる四天王の事まで教えるとか後で魔王様に叱られるんじゃないのか?」
「俺の心配してくれんのはありがてぇが、先に仲間の勝利を信じてやるべきじゃあねぇのかよ?」
「してるさ。だから地獄に落ちたお前らの仲の心配をしてやってるんじゃねぇか」
「言うじゃねぇか、地獄で再開すんのがお前らでない事を祈るんだな」
兵真はすれ違いざまに言いながら、リンフレッドに親指を立てて見せた。
「待ってるからな! リン!」
扉の向こうに、兵真達は消えていった。
兵真達の進んでいった扉は閉じられ、広間にはリンフレッドとグランハンドの二人が取り残された。
グランハンドは自らにタイマンでの勝負を挑んできたリンフレッドに不敵な笑みを浮かべてみせる。
「にしてもホント、いい度胸してるぜお前。さっきの兄ちゃんも言ってたが、前に俺とヤった時の事忘れた訳じゃあねぇよな?」
「当たり前だろ。あんなもん一瞬の出来事すぎて逆に記憶に残るぜ」
「ってぇ事ぁ俺を倒せるだけの力を手に入れたか、それとも何か小細工でも用意してんのか、だな。見た目はあん時とほとんど変わっちゃいえねぇし、後者だろ?」
「馬鹿言ってんじゃねぇよ、俺の武器はこれまでもこれからもコレだけだ」
何らかの細工を疑うグランハンドに、リンフレッドは自信満々に拳を掲げる。
隠し玉の準備などない。そんな目をしたリンフレッドを見てグランハンドは笑う。
「ハッ、そうもハッキリ言えるってのは、あれから相当な修羅場を越えて来たってんだな。こいつぁ楽しみだぜ」
「まぁ越えてきたっちゃ越えてきたが、実を言うとお前相手に勝てるほどかは自信ないんだよな」
苦笑いしながらリンフレッドは笑う。確かにグランハンドとの戦いの後もいくらか強敵とは戦ったが、この再戦で勝利が確定していると言い切れるほどだとは到底思えていない。
そんなリンフレッドの苦笑を聞き、グランハンドはハァ? と声を漏らす。
「そんじゃあ何だ、お前はあいつらと一緒に束になってかかっても俺に勝てるかわかんねぇってのにあんなカッコ付けた真似しやがったのかよ?」
「どんなもんだよ。実際カッコよかっただろ?」
「……すげぇな、こいつぁとんでもない馬鹿がきやがったぜ」
「へっ、馬鹿で結構! またヘイム達と馬鹿話するためにもグランハンド! お前はこのリンフレッドがぶっ倒させてもらうぜッ!!」
「……いいぜぇ、そういう馬鹿も俺は大好きだ。俺も似たようなモンだかんな。……リンフレッド! お前はこの俺四天王のグランハンドが相手になるぜッ!!」




