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無限の異世界救世譚  作者: カイロ


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第三十一話 突入! 魔王城

 強烈な輝きに思わず兵真達は両腕で顔を覆った。

 その隙間から入り込む光が少しずつ弱まっていき、完全に治まったのを確認して腕を下ろすと、驚愕する。

 そこはあの仄かな明りだけの灯った小部屋などではなく、まるでどこかの宮殿を思わせるような場所だった。

 あの大蛇のいた大部屋よりは多少狭く左右に扉は無いが、前方にはいくつもの美しい輝きを放つ宝石が嵌め込まれた豪奢な大扉。

 見上げなくては届かないほどの天井には美しさの中にどこか邪悪さを感じさせる装飾の巨大なシャンデリアがぶら下がっている。

 後ろを振り返るが、そこには兵真と同じく呆然とした仲間たちと壁しか存在しない。

 気付けば先程まで兵真が手にしていたはずの宝玉もどこかへ消えていた。


「ここは……氷河の迷宮、じゃあなさそうだよな」


 状況が理解できずに呟かれる兵真の困惑したような問いかけに、仲間たちは頷きを返す。


「ここも隠し部屋、って感じじゃないっぽいしな。それにヘイム、ここなんか暖かくねぇか?」


 リンフレッドに言われ兵真は気付く。そういえば、氷河の迷宮とは比べ物にならないほど暖かい気がする。

 とはいえそんな気がする程度だ。今までいた場所と比較するならば暖かいが、快適とは言えない程度には寒さも感じる。


「まあ、さっきまでと比べたらそうだろうけど……それより、結局ここはどこなんだ?」


 兵真の疑問に、やはり誰も答えを返せない。

 突然の事であるし、仕方がないだろう。一様に首を振る仲間に兵真も首を振って答える。

 一度冷静になり今までの状況を考えた所、兵真は多分これはどこかにワープしたのだろうという結論に至った。

 気温的にはクリネラの周辺では無さそうだが、心当たりがないため正確にどこかまではわからない。

 それでも八方塞がりかと思われた状況からは脱出できた事に感謝し、先に進んでみようと決める。

 ここが何のための場所なのかはわからないが、これだけ立派な場所なのだし進めば誰かしらに会えるだろう。そう考えて兵真は悩むのをやめる。


「ま悩んで立って仕方ないよな。ここはもう進んで……」

『よく来たな、勇者達よ』


 突如、背後からエコーのかかった声がする。兵真はすぐさま振り返る。

 すると大扉の前に、黒く刺々しい全身鎧を纏った仮面の男が立っていた。

 そしてその男はよくよく見れば薄っすらと透けている。

 突然現れた邪悪な出で立ちの男に、兵真達はとっさに武器を構える。


「な、何だお前はッ!?」

『そう身構えるな。お前達の見えているモノは映像だ。私の本体ではない』


 そう言われ、兵真は納得した。確かにやたら声が反響してるし、体も透けているし、そりゃあそうだろうと。

 しかし、だからと言って警戒は緩めない。武器を構えたままの状態はキープしておく。

 それを眺めていた男は呆れてため息を吐き、まあいいと仕切り直す。


『さて、それでは改めて質問に答えさせて貰おう。……私は魔王、ルシールだ』

「ま、魔王ッ!?」

「そ、それじゃあここって……!」

「魔王の城、って事かしら」

「ウウウゥ……!」

『察しが早くて助かるな。そう、ここは私の居城。氷河の迷宮を生きて突破したようだが、ここからは決して逃がさんぞ』


 そう言って魔王ルシールは指を鳴らすと、地響きを鳴らしながら背後の大扉が開く。


『この先には私の最も信頼する者達が待ち構えている。お前達も一度は逃げ延びたようだが、今度はそうはいかん』


 今度こそ殺す。そう宣言するとルシールの映像が足元からゆっくりと消えていく。


『せいぜい、足掻くがいい』


 言葉と共に、ルシールの姿は完全に消え去った。


 魔王の映像が消えた部屋には、一行の唖然とした表情だけが残っていた。

 四天王との戦いに備えて氷河の迷宮を攻略し四天王との戦いのために少しでも力をつけようという作戦だったのに、なんとそのまま魔王城に乗り込んでしまった。

 しかも、退路を断たれている。元々帰る道も無くしてはいたので迷宮に戻れた所で対して差はなかったかもしれないが。

 あの時から多少時は経った。力も以前よりあるはずだし、同じ轍を踏むような事にはならないだろう。

 それでも、未だあの圧倒的な力の差が記憶にこびりついて離れない。もしかしたら勝てないかもしれない。そんな不安を皆抱いている事だろう。

 あの扉の向こうに、四天王がいる。負けるかもしれないが、退けない以上は進まざるを得ない。

 それでも、勝てるかどうかわからない。みんな不安だろう。そう思い兵真は仲間を見渡すが、一人だけ、違った。


「…………ッ!」

「リン……?」


 リンフレッドは、拳を握り締めていた。そして、その顔には不安などなかった。

 歯を食いしばり、すでに消えたルシールのいた場所を鬼のような形相で睨み続けている。

 魔王が名乗った時からずっと黙ってそうしていたリンフレッドは、兵真の声を聞きようやく口を開く。


「魔王ルシール……! 俺の親友ラジエルと、その恋人シンディの命を奪ったアイツは! 絶対に、許さねぇ……!!」

「リン……。そう、だったな」


 これから勝算の不明な戦いに挑む事に恐怖していた兵真だったが、リンフレッドの怒りの呟きにそれは消えてなくなった。

 そう、今までそんな素振りは殆ど見せてこなかったが、リンフレッドが兵真と共に来る理由はそれだったのだ。

 今のリンフレッドを見て、兵真はそれを思い出す。

 負けるかもしれない。だがそれでも挑まなくてはいけないのだ。

 リンフレッドの友にした行いも、カインと戦ったあの村での出来事も、決して許されるものではない。

 どれほど高い壁が目の前に立ちはだかっていようとも、それらをぶち破って奴には贖罪をさせねばならないのだ。

 もはや不安などない。兵真は仲間たちに叫ぶ。


「みんな、行くぞ! 四天王は強い。そして魔王のルシールもきっとそれ以上に強いだろう。俺達では敵わないかもしれない。だがそれでもルシールはやってはいけない事をしてきたんだ! だから、その罪を償わせるためにも俺達はこんなとこで立ち止まっていられないッ!!」


 兵真の言葉に、仲間たちの恐怖も消えたようだ。迷いなく、頷く。


「……うん、ヘイム。わたし、頑張る」

「そうね。そして、みんなで生きて帰りましょう」

「ウォオオオーーン!」


 そうしてそれから、兵真はリンフレッドの手を取る。


「そういうわけだ、リン。四天王の奴らブッ倒して、魔王も倒して、自分のしてきた事の代償を払わせに行こうぜ」

「ヘイム……。ああ、絶対に落とし前は付けさせてやるぜ!!」


 リンフレッドは取られた手を握り返し、兵真と視線を交わす。その瞳には、確かな覚悟が宿っていた。


「いくぜ、みんなッ!!」


 兵真の掛け声で、仲間と共に大扉の中へと進んで行く。

 絶対に、ここから生きて帰るという決意を胸に。

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