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無限の異世界救世譚  作者: カイロ


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第二十七話 氷河の迷宮 第四層

 次の日の早朝より、兵真達は第四層へと足を踏み入れていた。

 三層まで降りた際に再びあのインキュバスと会い、階段の場所まで案内させたので今まで以上にスムーズに到着した。


「……聞いてたよりも静かだな」


 降りてすぐには聞き及んでいた何かの這うような音は聞こえず、しばらくの間その場を動かずに待機していたがいっこうに変わりはない。

 いつまでもこうしていては埒が明かない。兵真は仲間と共に慎重に進む事を決める。

 その結果、この階層は中央に大きな正方形に近い広間があり、その左右と兵真達の降りてきた階段側にはそれぞれが繋がった細長い通路がある事が分かった。

 だが、中央の部屋の床が大分荒れている以外に不審な点は見つからない。

 さらに十数分ほどかけてこの階層を何度か回ってみるが、やはり魔物一匹見つからず、それどころか下へ進む階段すら発見できなかった。


「なんにもいねーじゃねーか! こりゃあアイツの聞き間違えだったんじゃねーのか?」

「いや、それはどうだろうな」


 中央の部屋へ戻り兵真達は少し休んでいた。

 そしてリンフレッドの落胆を皮切りに他の面々にもがっかりとしたものを表情に浮かべるが、兵真はそうではない。

 間違いなくこの階のどこかに何かがいる。長年培ってきた兵真のカンがそう告げているのだ。まあ、カンとは言ってもゲームでの話だが。


「でも一通り見て回りはしたけど魔物はいなさそうだったじゃないか?」

「そうなんだけど……なんかいるって絶対! こんなあからさまに怪しい部屋の構造で何もいない訳ないんだって! ほら、ナナフサも何か感じてるし!」


 そう言って兵真が指し示した先ではナナフサがしきりに鼻を鳴らし、周辺をやたらとキョロキョロしていた。

 そして、一行の視線がナナフサに集まると、何かに気付いたように一瞬止まり、駆け出した。


「おおっ見ろ! やっぱ俺の思った通りに人間じゃあ感じ取れない何かを探し当てたんだ! みんな、後を追うぞ!」


 兵真に促されながら仲間達は追いかけると、ナナフサは階段とは反対側の壁へと向かい、その左の方の角の位置で止まった。


「おお! こんなところに他より少しだけ突き出ている氷が! ナナフサ、一体これに何を感じ取ったんだ!?」


 そこには一見何の変哲もなさそうな氷柱が地面から突き出ていた。

 周りを見渡せばこのようなものは生えておらず、そういう意味ではこれは確かに怪しいかもしれない。

 とはいえここは氷河の迷宮と名が付いているのだ。それを考えれば氷柱など別段珍しくはない。

 だというのに、一体ナナフサはこの氷柱に何を感じたのか。兵真はナナフサの行動に注視する。

 するとナナフサは一行に顔を向け、氷柱を背にする。

 ……そして、片足を上げた。


「ゥォーン……」


 いつまで見ているつもりなのか、と言いたげな顔と声でナナフサは吠える。


「そういえばナナフサ、今朝はおしっこしてなかったもんね」


 納得がいったようにムツミは頷き、それに続き兵真たちはナナフサに背を向ける。と、同時に豪快な水の流れる音が響き渡った。

 それを聞き、兵真は天を仰いだ。


「糞、こんなオチかよ……」

「いや、おしっこだよ? ヘイム」

「そういう小さいボケはいいから! ……って事は何? 俺らもしかしてお宝も無ければ魔物もほとんどいない迷宮を何日もかけて攻略してたって事かよ!? うわああ猛烈に無駄な時間を過ごしてた……!」


 兵真ががっくりと膝を突き落ち込み始めると、いやいや、とレイニーがその言葉を否定する。


「そんな事はないわよ。だって、アタシ達はこの迷宮での冒険で」

「先に言っておきますけど、友情と言う宝を得たからー、とかそういうのいいですからね?」

「…………」


 レイニーはそれ以上何も言わなかった。今から自分はカッコいい事を言うぞという表情だけを残してそのまま口を閉じた。


「と言うか俺らそもそもここ来る前から大分友情深め合ってたわけだし今更そんなの手に入れても……うおおっ!」


 一応フォローはしておかないと、と思って兵真が口を開くと、突如として地面が揺れ始めた。

 突然の事にバランスを崩して兵真は仰向けに倒れ、背後の光景が目に入る。

 なんと、ナナフサが尿をかけていた氷柱が徐々にせり上がっているのだ。


「ってことはつまりあれがこの震源、ならアレは……!」


 ナナフサは揺れに驚き兵真の元へと駆け寄ってくる。どうやら、知らず知らずの内にナナフサはアタリを見つけ出していたらしい。


「やっぱりいたぜ……みんな! 魔物だ!」


 床が荒れていたように見えたがどうやらそれは砂のように細かくなっていたためだったようだ。

 兵真の身長の二倍以上はあるだろう巨大な頭がズルズルと床から這い出し、それと同じほどの太さの胴が7メートル以上続いている。

 それは巨大な青白い鱗を持つ大きな蛇だった。突き出ていた氷柱はどうやら鼻先に生えた角だったようだ。

 全身を露わにした大蛇はゆっくりと首をもたげて兵真達の存在を確認し、金色の瞳を大きく見開くと、吠えた。

 階層全体を揺るがすほどの爆音に皆耳を塞ぎ頭を抱えた。

 そして兵真は見る。徐々に収まり出した咆哮に片目を開けて大蛇を見ると、巨大な顎を開いてバネの様な跳躍でこちらへ爆進してくる瞬間を。


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