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無限の異世界救世譚  作者: カイロ


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第十七話 氷河の迷宮へ

「おおっ、お前達! だいぶボロボロだけど、もしかして魔鉱山から戻ったのか!?」

「え、ええ、まあ……」

「うん? その割には浮かねぇ顔してるけど、どうしたよ?」

「……魔物は一応、全滅させたとは思うんですが……」


 魔鉱街まで戻ってきた兵真たちは武具屋まで報告にやってきていた。

 魔物自体はもう殆ど残っていないだろうという事だけなら兵真たちもわかりきっているのでもっと気楽に報告できたのだが、鉱山にもダメージを与えてしまったので気が重い。

 崩落は四天王と戦った最深部とその周囲が一部崩れた程度に留まるのだが、一部とは言え自分達のせいで鉱山を傷付けてしまったのは非常に申し訳ないが、黙っているわけにもいかない。


「そうか。戦いで奥が、な」

「す、すみません……」


 ただし、魔王の四天王と戦ったというのは信じてもらえるか自信が無かったので多少ぼかした。非常に強力な魔物と戦ったとは言っておいたので嘘とも言いきれないだろうと兵真は思う。


「まあ、一番深いトコですげえ石が見つかったって話は最近噂だったからなぁ。それが見られんくなったのは残念だが、魔鉱山がまた人の入れる場所になったってのはありがてぇ事だよ。きっと鉱山でメシ食ってる奴らはみんなお前さんらに感謝してるさ。……さて、約束だったな。今日は出血大サービスだ、好きなだけ買ってってくれ!!」


 鉱山を破壊した事に多少なりとも叱責があるかと覚悟していた兵真たちだったが、店主はまったく責めるようなことを言わず、それどころか多大な感謝をしてくれた。

 そして、約束通り格安で商品を売ってもらえることになった。


「いいんですか? 鉱山、壊しちゃったのに」

「気にすんなっての。今までは全部潰れちまってたようなモンなんだからな。奥も崩れたっつったって、後は運び出すだけでいいんだからむしろ手間が省けたってんだ、気に病む事はねぇさ!」


 軽く笑い飛ばし、店主はにこやかに自慢の武具を次から次へと紹介し始めた。

 気にすることはないと言われ、兵真も気持ちを切り替える。多少の失敗は目を瞑るだけの成果を出した、という事だと納得する。

 そうして兵真たちも吟味を開始する。流石に店主が自慢するだけあって、どれもこれも今まで使っていた物より数段上の装備ばかりだった。

 結局兵真の財布は少し軽くなったが、それでもまだまだ有り余るほどに残っていた。帰り際に店主が「ちょっと安売りしすぎちまったぜ!」と笑っていたので心配になっていくらか多めに渡そうかと相談したがいらんいらんと押し返されてしまったので、結局はありがたく頂戴する事にした。

 装備を一新した兵真たちは日も沈み始めたので、宿を探すことにした。


 魔鉱山の魔物を殲滅した一行は一泊することを決めた。どこの宿に泊まるかもすぐに決まり、何か食事をしようとした時、一人の戦士らしき男が兵真に話しかけてきた。


「よお、ひょっとしてあんたらが魔鉱山を解放してくれたって人達かい?」

「そうだけど……何か用か?」

「いや、俺も剣がボロくなってきちまってな。少しばかり前に魔鉱街までやって来たんだけどよ、あのとんでもない値段にまいっててな。それがさっき魔鉱山の魔物が全滅したって聞いて武具屋に行ったらあんた達の事を聞いてさ」

「いっ、いやあそんな大した事俺らしてないってぇー」


 感謝する、と男に礼を言われ兵真は言葉では謙遜するも、顔に本音が出ていた。にやけ面で「もっと褒めてもっと褒めて」と表情が喋っていたとはムツミの談だ。


「……まあ、俺だけじゃなく感謝してる奴はたくさんいると思う。この街で買える装備は本当に質が良いからな。そんなわけで、俺からちょっとした情報をプレゼントさせてもらいたい」

「おう! 貰えるってならありがたく貰っておくぜ!」


 男が語ったのは未踏破の迷宮の話だった。なんでもここからしばらく北へ進んだ場所に迷宮が発見されたらしい。それもかなり最近。

 氷河の迷宮と名付けられたそこに数多の腕自慢の冒険家たちが挑んでいったが、その大半が死亡するか行方不明となり最深部に何があるのかすらも判明していないという話だ。

 非常に凶悪な魔物が迷宮内に溢れかえっているらしく、奥には何かものすごい宝物があるのではと度々噂されるが未だに内部構造すらもろくに把握できていないらしい。


「……礼としてこんな死地の話をするってのもおかしな話だが、ま、知らずに踏み込まないようにって忠告だとでも思っといてくれ。もっとも、魔鉱山の魔物を全滅させるくらい強いあんた達なら、ひょっとしたら迷宮を踏破できるかもと思わんでもないが」


 最後に、腕に自信があるなら挑戦してみるのもいいかもな、と付け加えて男は去って行った。


「氷河の迷宮か……。どうすんだヘイム? 俺としては気になるっちゃなるんだけど」

「そりゃあもちろん迷宮と聞いたらいざ行くしかないだろ。冒険者としては」

「あんた、勇者って言ってなかったっけ」

「わ、忘れてないよ!? 俺は勇者だよ!? でも俺的には迷宮と言ったら冒険者だからつい言っただけで!」


 迷宮と冒険者の繋がりがムツミにはよくわからなかったが、そこに不安げにレイニーは口を開いた。


「みんなが行くならアタシも付いて行くけど、危なくないかな? 強い魔物がいっぱいいるんでしょう?」

「大丈夫ですよレイニーさん! 四天王だって二人まとめて倒せるくらいには俺達も強くなってるんですから!」

「ウォン!」

「ほら、ナナフサもこう言ってるし大丈夫ですよ!」


 ナナフサがなんと言っているかは兵真はよくわかっていないが、心配はいらないととりあえず胸を張る。


「……そうよね。みんな強くなってるし、きっとどうにかできるわよね。アタシちょっと心配しすぎてたかも」

「俺とリンとナナフサでムツミにもレイニーさんにも魔物を近づけさせたりしませんから、安心してください! そのかわり遠くの敵への攻撃はお願いしますよ!」

「ええ、がんばりましょうね」


 兵真の特に根拠の無い自信に、レイニーの顔から不安が消えた。それを見て兵真も安心すると、ムツミが口を挟んでくる。


「でもさヘイム、わざわざそんなとこに行ってていいの? 魔王退治が目的なんじゃないの?」

「確かにそこが最終目標なんだけどさ、だいたいこういう未踏の迷宮なんかには魔王を倒すために必要な道具とか武器が眠ってたりするんだよ」

「なんでそんなことわかるの?」

「……経験、かな?」


 まあ、兵真は経験と言ったがゲームや物語の中での話だ。それも経験と言えば経験であるし嘘ではないかもしれないが。


「……勇者を名乗るだけあって結構すごいことさらっと言うのね。ちょっと見直したわ」


 兵真の返答を聞き、過去にも魔王と戦った経験があると思ったのかムツミは素直に関心している。


「ヘイムが言うんなら行く意味はあるんでしょうね。ちゃんとわたし達のこと守ってよ?」

「任せてくれ。そりゃあもう大船に乗ったつもりで任せてくれたっていいぜ!」


 兵真がウインクしながらサムズアップで答えると、ムツミははいはいと呆れ気味に返した。


「そういうヘンなのがなければ、ちょっとはかっこいいと思うんだけどな」


 ムツミの呟きは兵真の耳には届かなかったらしく、兵真は明日から氷河の迷宮を目指すための旅のルートを決めに入っていた。

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