第十四話 魔鉱山
その後兵真たちは順調に町まで辿り着く事ができた。
森林を抜けてから町までの道中で幾度か魔物に出くわす事はあったが、やはり兵真の予想通り今までの比ではなく自分達が強くなっている事を再確認できた。どの魔物の動きもスロウに見え、一瞬にして一撃で片がついたのだ。
そうして魔鉱街と呼ばれるこの街までやって来た兵真たちは一目散に武具屋を目指した。アイロネスほどではないがこの街にも名工と呼ばれる職人がいるらしいと聞いたのもあるが、やはりいい加減武器の新調をしたかった。
したかったのだが、武具屋に並ぶ装備品を見て目玉が飛び出た。どれもこれも値段設定がおかしかった。
兵真の買った剣より弱そうな普通の剣ですら家が買えるのでは、というほどの額で売られており、どういうことかと店主に尋ねると申し訳なさそうな顔で事情を話した。
どうやらこの街の近くの魔鉱山という上質な鉱石が採れる場所があるとの事だが、そこに多数の凶悪な魔物が住み着き鉱石の採掘が不可能な状態となっているらしい。
この店で売られている装備はどれもその魔鉱山産の鉱石を使うらしく、他の町からの仕入れなども街道に現れる魔物の妨害で滞っている有様なのだとか。
それを聞いて兵真は自分達が魔物を殲滅してくるからその暁には格安で武具を譲って貰う事を約束し魔鉱山へと足を運んだのだ。
「いやーそれにしても魔物に困り果てている人に手を貸すって、ようやく勇者らしくなってきたよな!」
「だなあヘイム。最近負けが続いてたけど、そろそろ俺達が一転して攻めに転じる番なのかもな」
ついに勇者としての調子が上がってきたのを喜びながらリンフレッドと共にウキウキしながら歩く。
人助けというのもいい気分になれて兵真は好きだが、魔鉱山の魔物が強敵揃いというのにもワクワクしていた。
強いと聞けば本来なら気を引き締める所なのだが、非常に危険と評されていたディザームを容易く倒せたというのもあり問題はないだろうと考えているのだ。それに、自分達は常人より強くなれるのが早いというのもあって兵真はうまみたっぷりのレベル上げポイントへ向かうような気分だ。
「うん、強くなったって分かったと言っても、お姉さんはあんまり舞い上がらない方がいいと思うな」
「そうよ。油断してたら死ぬかもしれないでしょ」
「ォオン」
男性陣とは対照的に女性陣はだいぶ冷静だった。まあナナフサはオスなのだがレイニーとムツミの言葉に追従するように吠えたので彼女らと同じ意見なのだろう。
「……まあ、確かにあんま調子乗りすぎるのもよくないな、リン」
「ああ。そりゃあそうだよな。戦う時はちゃんと気持ち切り替えて真面目にいかないとなヘイム。……おっと、そろそろ魔鉱山とやらが見えてきたみたいだぜ」
確かに強くはなったが、死ぬ可能性がゼロになったわけではない。一瞬の油断が命取りとなりうる事は兵真もリンフレッドも理解していたはずだ。
これはいけないと気を引き締め直す。浮かれるのは街にでも戻って食事を摂っている時にすべきだ。
二人が反省すると同じくして鉱山の入口らしき洞窟が姿を見せる。
「ん? 入口に誰か居るな」
リンフレッドが目を凝らしてよく見ると、そこには少女が一人でぽつんと立っていた。
黒を基調とした、いわゆるゴスロリ服を着た少女は、腕に仮面のようなものを付けた人形を抱いて退屈そうにしている。
「よっ、お嬢ちゃん。こんなとこで何してんだい?」
リンフレッドが声をかけると、少女の表情は一瞬明るくなったが、リンフレッドの顔を見て眉間に皺を寄せた。
「あんた達、誰?」
「えっ? ああ、別に怪しいモンじゃないんだ。この魔鉱山の魔物に近くの街の人らが迷惑してるって聞いて、倒しに来ただけさ。……で、改めてお嬢ちゃんはこんな魔物がいつ出てくるかわかんない危ねえ所で何やってたんだい?」
リンフレッドに再び問い返されて少女は両手をやれやれといった風に上げて口を開く。
「ハァ……。友達を待ってたんだけどね、待ち合わせの時間をいくら過ぎても来ないからどうしようか困ってた所。あんた達、この奥に行くなら私も一緒に行ってもいい? もしかしたら奥に行って待ってるのかもって思って」
少女の言葉を聞きリンフレッドはどうするよ、と兵真に目で聞いてくる。
「うーん、まあこんな小さい子一人じゃ心細いだろうし、置いてく訳にもいかないだろ。一緒に行こうぜ。俺尖崎兵真ってんだ」
「そう言って貰えると助かるわ、ありがと。私はフレーシスよ。よろしく」
こうして、兵真たちは軽く自己紹介し、フレーシスと共に魔鉱山の奥を目指す事になった。




