1 夢を見た少年達の話
力強くて、真っ直ぐな瞳が射抜くように僕を見た。
僕はその視線を受けて、固唾を呑んで声を聞き取る。聞き逃すことがないように。忘れない様に、心に刻み込むために。
約束をしようと、彼は言った。
広がる空はどこまでも青く、全く雨も降りそうもなくて、ぎらついた太陽が顔を覗かせていた。ローブで覆った体に伝う汗は、冷や汗の類だ。騎士団の団長が何やらメガホンを使って難しい言葉を叫んでいるのが聞こえるけれど、それさえも聞き流して、僕は動くこともできず、光景に見入った。
空の下には処刑台があった。
空の下には彼が居た。
両手で握りしめたペンダントが、ちょっとだけ軋んだように音をあげた。息がし辛くて、僕は、短く乱れた呼吸をした。
「これより、断罪の儀を行う―――彼は、魔王を逃がすという大罪を犯した。我々の身を脅かす存在と成った。非常に残念なことだ、だが、これも――正義の為には、仕方がない」
偉そうに騎士団長が、いや、騎士団長なのだ、偉いのだろうけれど。分かったような口で公言する。僕は叫びそうになった喉元をきつく締めた。ああ苦しい。息ができない、苦しい。
正義って何だ。
誰かの言葉に従って、我がものとして権力を振りかざすことか。誰かの理念を信じ、尊敬し、何よりも遵守しなくてはならないものと誓いを立てることか。果てにこの処刑が成り立つものだと言うのならば、僕は決して許すことなどできやしない。しかし、うたってみたところで、僕は、何もできない。僕に何かを叫ぶ資格さえ、ないのだから。
正義って、何だ。
僕らの絆は、陳腐なもので壊されてしまうのか。
それなら尚更おかしい。馬鹿馬鹿しい。ふざけている。愚かしい。
―――悔しい。
悔しい、
悔しい悔しい悔しい悔しい!!!!!!
心の奥で吐いた血反吐がせりあがってきて言葉として吐き出されたがっている。民衆の中で僕はもう一度、首に当てた手の力を強めた。悔しい、苦しい、苦しい。
苦しいよ。
「―――それでは、罪人よ。前へ」
そして彼は絞首台へ、迷いのない足取りで進んでいった。
これは。
僕の、惨めな幻想の物語だ。思い描いた夢を、理想を、叶えたいと思ってしまった果ての話。それでも繋いだ約束があった。忘れちゃいけない約束が、僕を、ちっぽけな夢に進ませる。あの日、迷いなく進んだ彼のように、一歩ずつ、僕のやり方で、僕は夢を叶えてみせる。
君と語った夢の話をしよう。
君が忘れてしまっただろう夢の話をしよう。
どれだけ苦しくて、どれだけ悔しい道になってしまうのか。僕は分からない。でも、きっとあの日の青空の下、それ以上の苦しさも悔しさは押し寄せない。
歩くのだ。自分の脚で、自分の力で、自分自身で。
なるべく早めの更新を心がけるつもりです。
よろしくお願いします。