春
「セカンド童貞って何ですか?」
22歳、みのり。
「二年間セックスをしていないことだよ。」
25歳、健太郎。
この人セックスそんなにしてないんだ。へぇ。へぇ。そうなんだ。
始まりはそんなだった。SNSで出会い、健太郎とは二ヶ月メールをした。私は健太郎に好意をもっていた。写真でしか見たことは無いが、彼の綺麗な顔立ちが好きだった。
会わないと思っていた。毎日メールをした。彼は1人暮らしで自炊をしているのだ、と作ったごはんを写真に撮って送ってきた。普段は撮らないのだけれども、みのりちゃんも料理するのが好きみたいだから、と。愛しいと思った。いつしかお互いに「好き」という言葉を文字で交わすようになった。
幸いにも私の通う大学の近くに彼は住んでいるらしい。会いたい。会いたい。こんなにも近くにいて、何故会わないのだ。私はお菓子を作った。バイト先のお洒落な主婦さんにレシピを教えてもらったスノーボールクッキーと、もしも今日会えなくても、寝かせればさらに美味しくなるパウンドケーキを作った。
「今日バイトないんだけど、仕事おわりに会えないかな?」
ドキドキした、いっそ返事なんてこなければいい。携帯を見るのをすぐにやめたが、意外にもすぐにマナーモードが鳴る。
「今日は会議があるから遅くなるかもだけど。」
これって、駄目だってことかな。でも持ってきちゃったし。今日会いたい。私は、クッキーとケーキの画像を送った。
「作っちゃったんだよね、渡すだけでも。」
私は強気だ。きっかけが無ければ私達は会わないのだから。彼を知らないままメールで偽装恋愛のようなやり取りは嫌だと思っていた。
「駅で、18時に待ち合わせしようか。」
18時。待ち合わせ場所はあえて人混みにした。私は彼を見つけたかった。
「ついたよ、どこにいる?」
あたりを見渡す。彼らしき人が見つからない。見つからないといっても写真でしか見たことがないのだから、わからないか、と思い、自分から見える目印を彼に伝えた。
「私の前におばあさん達のグループが待ち合わせしているからわかりやすいはず、おばあさん達がたくさんいる」
『みのり、、ちゃん?』
後ろから声がした。一度だけ電話したことがある。聞き憶えのある、少し高い、声。
「健太郎さん!」
写真とは違う健太郎さん。でも確かに健太郎さん。顔立ちは綺麗で背が高くて、でも何故かどこか自信がない。
「せっかくだからご飯食べにいこうか。」
彼は私を見ずにそう言った。彼に会った。初めて会った。待っている間に私は彼とどうやって接すれば良いのか色々と迷ったが、意外にもすぐに平常心になった。
オムライスを食べた。その後に、お店を出て色々な話をした。全く覚えていないけど特に中身の無い会話であった。私の家は厳しく門限があったため解散した。別れ際はあっけなくて、少し先まで送ってくれるのかな、と思ったがお互い違う路線であっさりとバイバイと手を振った。彼は私を見ずに。