第1話「普通の定義とは定まっていないもの」
放課後。
南谷城公立高等学校、旧校舎第二図書室に我らの文芸部はいつも通り集合していた。
ただし、今日はいつもみたいに雑談をするわけじゃない!
議題はもちろん。
「俺、彼女出来たよ!」
「「なんのゲーム?」」
「二次元じゃない!三次元!」
「フィギュア?」
「あれは2.5次元」
「お前らもう嫌い……」
俺に彼女が出来た、ということについてだ。
いや別にあれだよ?自慢したかったわけじゃないよ?
だって俺の親友兼我が文芸部の部員たちはイケメン率高いから……うん……あれおかしいな、目から汗が。
ともかく!
俺は彼女いない歴=年齢なのだ!
そう!俺には圧倒的に恋人のいる状態、というものの経験値が足りない!それを補うためにモッテモテな彼らに相談を持ちかけようとしたらこのザマだよ……。
「ごめんって、冗談だって」
「あー、お約束かなってノっただけだから!すまん!」
インテリ系眼鏡男子であり文芸部会計の親友、木津 天が慌てたようにそう謝ると連られて爽やか系イケメンの代名詞のような文芸部副部長のこちらも俺の親友、鴉 奏多も苦笑しつつそれに倣う。
どSといえば天、天といえばどSな彼は俺たち親友に対してはわりと弱い。
対象的に奏多はわりと止めを刺してくるときがあるけど何故か憎めない。
どちらも俺の大切な親友である。
もうもはや心友?
そこで考え込むように顎に手を当てた天が何かしら確信したのか俺に向き直った。
「なぁ、文月。もしかしてその彼女ってさ、すっごい美人だったりする?」
「え?うん、確かに美少女だったな」
「同じ学年?」
「おう」
「隣のクラス?」
「生徒手帳にはそう書いてあった」
「……名前は高城 智沙良?」
「なんでわかった?!」
こわっ、俺まだ名前教えてないよ!?
奏多も天の言葉に怯えてたりするのかと思ったら普通に「やっぱりか」と呟いていた。
なんで!?なんでやっぱり?!
「いや、うん……やっと告ったのか、あの子」
「やっと?」
「あー、いや、一部では有名だったんだよ」
何かを誤魔化すように笑いながらいった我が親友たち。
「誤魔化すの、やめてくんない?」
「あー……えっと」
「お前さ、その女の子と初対面だと思ってる?」
?
変な質問だな。
「面と向かって話したことはないな。廊下で何度かすれ違ってるかもしれないけど」
「実はあの子さ」
そこで天は一度言葉を切り、躊躇ったあと口を開いた。
「お前のストーカーなんだよね」
………。
「は?」
ストーキングとは。
特定の人につきまとうことを言う。そして、ストーカーとはつきまといをする人のことを指している。
もともと英語には「stalk ストーク」という動詞があり、これは人や動物を捕えたり害をくわえるために忍び寄ることを指している。
それに「ing」や「er」をつけて行為を指したり、行為主を指しているわけである。人を執拗に追跡したり、それによって相手を悩ませたり怖がらせる人がいる、ということが社会的に知られるようになり、犯罪行為である。(byウィキペディア先生)
「……まじで?」
全く俺、感知してなかったんだけど?!
「「まじで」」
拝啓、お父さんお母さんへ
あなた達の息子はストーカーと結婚を前提に付き合うことにしてしまったようですよ……。
ま、なんとかなるだろう。
「あれ?今俺、文月がものすごく投げやりになってる気がする。気のせいかな?」
「気のせいじゃないと思うぞ、天」
「はっはっはっ」
…………普通って、なんだっけ?
はぁ……うん、気を取り直そう。
今日の議題はまだある。
「そんなことは一回置いておこう」
「そんなことで済ませていいのか?これ」
「文月本人がいいって言ってるんだからいいんじゃね?」
「いや、考えすぎたらドツボに嵌りそうで……と、とにかく!
もっと死活問題なの!
文芸部がこのままだと潰れる!」
「「だろうな」」
えっ、何その薄い反応。
潰れちゃうんだよ?
このオアシスからさらばしなきゃいけないんだよ?
「お前らはそれでもこの文芸部の一員か!」
「いやだって、俺ら……つまり3人しかいないしこの部活」
「確か部員が5人はいなきゃなんだろ?無理じゃん」
ぐっ……こいつらすごい冷静だ……!
ちなみにこの文芸部、創立者は俺だ。
この学校入学時にノリで創設させた。よって創設歴は僅か3週間。
創設できた理由は簡単。
俺が入学当時、この学校首位だったからだ。
とある事情でそうしなければならなかった俺はそれはもう必死で勉強した。
もう二度としない。
この学校は実力主義で、成績の良いものは優遇される。
え?今?
勉強したら負けかなって……うん。
大丈夫!赤点はとらないように工夫してるから!!
「担任はどうやらこの部活があるから俺の成績が下がったんだと思っているらしい」
「そらそう思うだろ、今お前底辺あたり彷徨ってるし」
「奏多……ひどくね?冷静すぎない?」
「勉強しろよ」
「いやだ!!!」
勉強なんてもう二度としないって決めたんだ!
だってあんな壇上登らされるとか聞いてない。
その旨を話すと担任兼この部の顧問は条件を出してきた。
『部員数を今の倍にしろ』
……無理じゃね?
「ってことで目指せ6人!!!」
「お前が勉強すれば済むはな……」
「そこはインテリ系眼鏡男子たる天に頑張ってもらおう!」
「いや、現首位の化け物に勝てる気しないから無理」
「??誰、それ?」
化け物?そんなのがこの学校にいるの?
まじか、見てみたい。
「文月……お前、さては成績表みてないな?」
「あったり前じゃん?勉強したくないもん」
「お前が真面目に勉強したら勝てそうなのに……」
「やだね!しないよ!」
「いや、勉強しろよ」
「奏多はそればっかか!
というか誰なのその化け物って!」
「隣のクラスのみおつくし なぎってやつ。
5教科8科目、800点満点中792点の猛者だよ。
平均1科目99点だからな?
100点防止問題をバンバン出してくるこの学校でこの点数は頭イってるとしか思えないね」
ナニソレスゴイコワイ。
怖っ、あの問題を?
無理じゃね?
俺せいぜい60点ぐらいがいいとこだぜ?
「いや、勉強したら70は取れるようになってるからな?」
「なぜ俺が考えてることがわかった天!」
「いや、顔に出てた」
「おうふ……」
というか、待てよ?
「つまりそいつをこの部に招待したらモーマンタイ?」
「はぁ!?」
「ちょ、文月考え直せ、あいつスッゲー頭悪いやつには冷たいって有名だぞ!」
プライドの高いツンデレインテリか。
天はどS俺様インテリだからちょうどいいな!
「だめだ奏多、文月のこの状態は話を聞いていない!」
「よっし!今そいつどこにいる?」
「どうなっても知らねぇぞこの馬鹿……新校舎の第3図書館だと思うぞ」
「じゃあみんなで……いやぞろぞろいってもアレか。お前らはここで待機!行ってくる!」
ふははは待ってろみおつくしクン!!
とりあえずあったらまずどんな漢字を書くのか教えてもらおう。




