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魔術屋とイベント  作者: 神無 乃愛


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3/8

夏姫とHalloween~裏舞台~

 夏姫のハロウィンは前日から始まったといっても過言ではなかった。

「Trick or Treat?」

「……何やってるんですか、小父さん」

「お前なぁ。……獏もいないし忠告に来たつもりだったんだが」

「それはありがとうございます」

 現状、夏姫が「小父さん」と呼ぶ男はただ一人、四条院 杏里のみである。

「明日、絶対にお前の使い魔に言われるぞ。何せ明日がハロウィン当日だ」

 獏もお使いでいないからという理由だけで、一緒に歩く杏里にそんなことを言われた。

「魔青は食事しないし……こういうものでいいか」

 そう言って夏姫が手にしたのは、近くの露店で売っていたチョーカーだった。そして同じようなペンダントトップも一応買っておく。

 これで二人(?)への対策は万全である。

「白銀の呪術師にはどうするんだ?」

「セクハラとして拳で訴えます」

「……師匠相手にそれかよ」

「十分あたしも獏も聖に『悪戯』されているという感覚がありますから」

 現状を話せば、杏里も納得していた。

「お前がお菓子をもらわないと割りあわねぇんじゃねぇか?」

「いりません」

 甘いものは苦手である。

「そうかい」

 マンション近くまで行くと、獏が待っていた。

 そして、そこで杏里と別れた。



 案の定、夏姫は魔青に言われ、あっさりとクリア。ついでに獏にも渡しておけば、納得してくれる物分りのいい使い魔である。

「夏姫、紅蓮か樹杏にこの書類を今日中に持っていってほしい」

 しかもこのままの格好で。嫌がる夏姫に聖は「悪戯」とあっさり言ってのけ、ため息をついた。

 この格好で行けば、あちらでも「Trick or Treat?」と言われてしまうだろう。

 かなりまずい。そう思った夏姫は、キッチンにいるサファイの元へ向かった。

 目的はパンプキンパイである。

「夏姫様。そちらのパイはジャック・オー・ランタンを作った際に出たもので作ったパイです。水っぽいですし、ペット連れの方へ差し上げるものですから、甘みも少ない……」

「ちょうどいいから、これとドラジェ型のおやつを持ってく」

 そして夏姫は四条院コンツェルンのビルへ向かった。



 あっさり引っかかったのが、紅蓮ではなく葛葉ということに驚いたが、パイを渡し、その上で樹杏にドラジェを渡した。

 樹杏が嫌そうな顔をしていたから、おそらくばれたのだろう。

 あとは知らない。




「……これもペット用ですわね」

 パンプキンパイを食べた葛葉が呟いた。

「しかもこれ、ランタン用のやつですね。水っぽい」

 冬太も嫌そうな顔で食べていた。

 全員、口に含んでしまったため、残すことも出来ずに食べていた。

「見事な『悪戯』だな」

 樹杏が呟いた。

「本当に、知らない振りしてこういうことなさるんですもの……性質が悪い時がございますわよね」

「ハロウィンにかこつけてきたお前の台詞ではないだろうが、葛葉」

「そうですけど……。悔しいですわ。兄様に何も仕掛けてませんもの。それに兄様の分を取っておかなかった自分が恨めしいですわ」

 いつものつもりで切り分けたパンプキンパイ。量が多かったのは勿論葛葉である。

「ドラジェ、ペットのいる社員に渡してやれ」

「かしこまりました」

 樹杏の言葉に冬太が苦笑していた。



 仕事を終え、樹杏のところに報告に行くと、机の上に箱が一つ置いてあった。

「夏姫さんが持って来てくれましたの! ハロウィンということで」

「悪戯できなかったのか?」

 何を隠そう、ワンピースを用意したのは紅蓮である。

「えぇ。しっかりと。でも、本日の装いも素敵でしたわぁ。そして、いただいたパンプキンパイも美味しくて。兄様に残しておこうと思ったんですが、全て食べてしまいました」

 にっこりと微笑んで葛葉が言う。葛葉の甘味に対する言葉は信頼できる。そして、それを食べれなかったことが、紅蓮は何よりも悔しかった。

「くそっ」

「うん。んまかった」

 たまたま来ていた友人まで言う。尚更悔しさがこみ上げてくる。

 定時であがれば、店の閉店まで間に合う。それまでに悪戯を仕掛けられればいいと思った。


 定時になり、いつもはもう少し残るはずだが、本日は急いで帰宅準備を始めた。


「夏姫! Trick or Treat?」

 しかし、悪戯する暇もなく、夏姫からコインを渡された。


 金色のコイン、では無く、コイン型チョコレート。その上から金色の包装紙がされているだけである。

 しっかりお菓子を貰いがてら、仕返しの悪戯までされた紅蓮であった。


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