プロローグ
毎度のこととはいえ、この男の言い出すことは唐突である。
「イベント?」
「そう。『魔術屋』だけでは成り立たないから、こうやって趣味のファンシーショップもやっているわけだが、こちらのほうはイベントのたびに売り上げがあがるからね」
日本人特有らしい。
「色々イベントがあるときは、紅蓮の秘書を休んでこちらの店にかかりきりになって欲しいんだよ」
「分かった。で、イベントって?」
「それはもう、正月に始まり、大晦日まで。古今東西問わないイベントだ。まぁ、売り上げがあるものだけ、強制参加かな?」
まったくもって嫌な予感しかしない。
「勿論、そのイベントにあった服をこちら側で用意するよ」
やっぱりか……。ため息がでそうになる夏姫に、聖はさらに付け加えた。
「今回からは獏もいるからね。ペット用コスチュームも販売。売れそうだ」
獏の毛並みが逆立つのが分かった。
「何、以前店番した時のように、『可愛く』着飾るだけの話だ。問題ない」
「こっちは問題大有りなんだけど」
「そうかい? ではこちらに来ないというのなら、その格好で紅蓮のところに仕事に行ってもらうが。勿論、紅蓮の許可は取ってある。向こうでもう少し違うものに着替えさせると言っていたね」
「類友か!」
夏姫は思わず叫んだ。
「そう言わずに。葛葉も参加したいそうだ」
「……ワカリマシタ。この店だけでさせていただきます」
こうして夏姫と獏がファンシーショップ「魔青」のイベントに、強制参加が決まった。