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最終下校時間
「くだらない。」
露骨に嫌な顔をしているのが自分でもわかるくらい顔が歪む。私の顔を歪ませたこの男を紹介しておこう。こいつは赤羽 悠哉私の幼馴染にあたる。腐れ縁とでもいうべきか、私とは幼稚園から現在の高校に至るまで、全て同じ場所に通っている。
ついでに私自身の紹介もしておこう。高浜 冴華高校一年生。女。…これぐらいしかいうことが無い。
「相変わらず冷てぇなぁー…」
声こそ残念そうだがきっと顔を見ればニヤニヤしているんだろう。
「…終わった。」
赤羽を無視し、静かに書き終わった日誌を閉じた。
夕焼けの色が濃くなる。僅かに聞こえていた吹奏楽部の演奏も聞こえなくなった。最終下校時間が近いのだろう。
「お疲れさま。」
日誌を教卓に投げるようにして置いた私に、そいつは左肩に自分のバッグ、右手に私の鞄を持ったまま笑った。
「鞄、取ってくれたのか。ありがと」
鞄を受け取り、少し建て付けの悪い扉を半ば無理矢理こじ開けた。
「んじゃ、帰ろうか。」