#1...暗闇の親友。
人は満たされる為に生きているって誰かが言っていた。
その通りだと思う。
──じゃあ、私は何の為に生きているの?
夜、ベッドの中で一人考えるのはいつも同じ事。
苦労というのは誰にも平等にある。
その大きさは違おうとも。
でも、苦労すらない私に、欲望なんて、満足なんて、目指す事すら出来ないって知ってしまった。
私は裕福な家の生まれ。
代々伝わる名家で、それ故に私を縛るものは多かった。
女の子が生まれたのは、2百年振りのことだったらしい。
何故、それまで女の子が生まれなかったのか、私は疑問に思っていた。
でた答えは一つ。
産ませなかった。
『男子が生まれたら十分に愛を捧げ、教育を優先に熱心に育てろ』
『女子が生まれたら最低限の礼儀作法を習わせたのなら、汚れのないまま成人まで育てよ。』
『不細工は一家の恥。処置は各々に任せる』
なんという男尊女卑だろうと怒りを覚える人も居るかもしれない。
でも、それを根っこから植えられた人間にとっては、これが「常識」なのだ。
その人の世界と言うものは、自分で作り上げるもの。
でも、世界を構成する核は、自分では作れない。
核を否定することは出来ない。
それは自分自身だから。
でも、私は何で産まれたのか。
分からない。今までは産まずに下ろしていたはずなのに。
私は、幸か不幸か、人並み以上の容姿をしていた。
この家の人は、しきたりを守り、私に礼儀作法を詰め込むと、部屋に軟禁した。
そう、9歳の頃から。
それ以来、私の友達は、夜こっそり顔を出す月と
目を瞑るとやってきてくれる、私が作った私の夢だけだった。
悲しくて、でも、涙も出ない。
雲で月が見えない夜は…
また、私の世界の中へ…
『ギィッ!!!ギィッ!!!ギィギィ!!!!!』
ガタガタと窓を叩く音と、奇妙な泣き声が、私の目を開かせた。
そっとカーテンを開けてみる。
怖くなんかない。
怖いってのが分からないし。
月明かりと共に私の眼に写ったのは、純白の小さな鳥だった。
とても白くて とても白くて 苦しそうだった。