表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/16

六幕 竹千代の決意と告白

第二次小豆坂の戦いの後、そして竹千代と言ったら・・・歴史に詳しい人は分かる事態が発生します。


竹千代にとって、そして信長にとっても重要なこの回、どうぞ。

「信広が人質に取られただと!?」

「は、はっ!先程今川から届いた書状にはそう綴られておりました!」



信秀が声を上げた理由、それは今川から届いた書状の内容だった。その内容とは、『安祥城を包囲、織田信広を人質にとらせてもらった。そちらの人質・松平竹千代との交換に応じる場合返す』とのことだった。



「い、如何致しましょう・・・」

「竹千代は織田にとって重要な存在、しかし信広は大切な娘・・・あ奴のことを考えると・・・むぅ・・・」



信秀は少しの時間悩んだ。



「・・・大成すために少の犠牲は止む無し、か・・・」



虚空を仰ぎ、信秀はそう呟いた・・・







































「竹千代を三河に!?」



翌朝、開口一番に叫んだのは信秀に呼ばれた信長だった。



「ああ。今川の方から昨日文が届いた。信広を・・・霧香を人質に取り竹千代との交換を告げて来よった」

「・・・姉上・・・っ!」



信長は床を拳で殴りつける。その拳には明らかな怒りの色があった。



「なぜ!なぜ姉上が人質に取られねばならぬ!?あの城はまだ攻められぬ場所であったろうが!!」

「落ち着くのだ、姫香」

「それに竹千代を差し出せと!?ふざけるのも大概に「姫香っ!!」・・・父・・・上・・・?」



一括され、言葉を失う信長。



「・・・元々竹千代は駿河に引き渡される者だったのは知っているな?」

「・・・はい。松平家先代が死に、存続のために今川に引き渡される所を我ら織田家にということは」

「だが今回は霧香の命と引き換えとなっている。・・・竹千代は引き渡されたその先で殺されるなどといったことはないだろうが、霧香は違う。拒んだ時点であ奴は死んでしまう・・・」

「・・・父上・・・」

「・・・姫香、父親として、領主としての苦し紛れの決断ということを理解してくれ・・・」



































「・・・え・・・!?」



信長から話を聞かされた竹千代は、「そんなことありえない」と言わんばかりの唖然とした顔をした。



「・・・嘘だと思うが・・・事実だ・・・!あたしだって認めたくはない・・・ないが・・・!」



信長も自分の思いを切実に告げた。元服する前・・・自分が吉法師と名乗っていた頃からの付き合いだった竹千代。その彼女が人質交換という理由で駿河に引き渡されるのだから、辛いのは当然だった。



「・・・少し、時間を頂けますか?」

「直ぐに引き渡せ、とは言わなかったから多少の時間があるだろうが・・・何をする気だ?」

「紅桜様にお礼と・・・私の気持ちを伝えようと思いまして」



そう言って立ち上がる竹千代は、部屋を出て紅桜の元へと向かった。それを慌てて追いかける信長。



































「紅桜様!」



中庭で鍛練中だった紅桜を見つけ、すぐに声をかけた竹千代。紅桜もその声にすぐ反応した。



「竹千代殿、如何なされたので?」

「・・・私、二日三日で尾張を去り、駿河へとこの身を引き渡されることになりました」

「・・・そうか・・・(俺はやっぱり・・・彼女の想いを守れなかったのか・・・)」



歴史を少しでも変えてみせると、竹千代を守ると思っていた矢先のことで、紅桜は内心舌打ちをした。



「それで、今まで私に勉学を教えて頂いたそのお礼を言いたく、参上しました」

「いや、礼を言われるほどのことはしていないと」

「いえ、私からすれば礼を言わねばならぬことなのです」



ありがとうございました、と頭を下げた時、奥から息を切らせた信長が現れた。



「それと・・・あと一つ、言いたいことがあるんです・・・。その、余り大声で言うような事でもないので、お顔を近づけて貰えますか・・・?」

「・・・構わないが・・・?」



竹千代に言われ、顔を近づける紅桜。その時だった。






































ちゅっ。



「っ!?」

「んにゃっ!?」



不意を突くかの如く紅桜の唇に己の唇を着けた竹千代。不意を突かれた紅桜はもちろん、それを見た信長も奇妙な声を上げていた。


そして、たっぷり10秒ほど続いた竹千代の口付けも、竹千代から離れていき、終わる。



「な・・・な・・・え・・・っ!?」

「・・・は、初めての接吻というのは・・・恥ずかしいものですね・・・」



頬を抑えて恥ずかしがる竹千代と、呆然とする紅桜。その後ろでは信長がわなわなと震えていた。



「そ、それで、お願いがあります。この日私がここを去っても、何れ紅桜様と相見えることがあると思います。その時は・・・その・・・べ、紅桜様の嫁として私を迎え、操を奪ってもらえますか!?」



いつも紅桜のことを惚けて見ていた竹千代からは想像できない大胆な告白。信長・紅桜共に固まっていた。



「それと・・・私のことを『織姫』と呼んで欲しいんです・・・。わ、私の・・・親名です・・・」



では、と上ずった声で頭を下げながら言い、脱兎の如く駆けて行った竹千代。残された紅桜は一度に色々なことがあり過ぎて呆然としていた。そして信長はというと・・・



(・・・何なの、先程から胸の内が苦しいというか、何か蠢いているような・・・このよく分からない感じは?・・・一体何!?)



自分の胸を抑え、もやもやした感じを抑える信長。今の彼女にはそれが嫉妬だということは理解できていなかった。








































そしてその翌日、竹千代・・・織姫は数名の護衛と共に駿河へと連れて行かれるのだった。しかし、紅桜の心には竹千代の言葉が深く刻まれていた。



『何れ紅桜様と相見える時があると思います』



(・・・もし約束を果たさなきゃならなくなるんだったら・・・それまでに強くならないとな・・・。・・・今度こそ、竹千代・・・織姫を守れるように・・・!)

次回は信秀の父としての思い、そして・・・紅桜この野郎!・・・な回です。


次回はシリアス7割・コミカル3割でお送りします。



今回、次回と書くべきような史実相違点はありません。

竹千代が信広と交換で今川領へ連行されるというのは実際にあったことなので。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ