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五幕 紅桜、小豆坂に初陣す

紅桜の初陣です。ちなみに時系列は第二次小豆坂の戦いです。

「・・・ついに頃合いか・・。皆の者!これより三河を攻める!!」

「・・・ついにこの時が来たか・・・!」



古渡城。信秀の『三河攻め』宣告に古渡城の面々が戦慄した。



「全軍、出陣の準備をせよ!この戦、勝利して三河を我が物とするぞ!!」



この宣言で織田に使える武将は全員奮い立った。・・・いや、一人だけ違った。



(・・・ついに小豆坂の戦い・・・!この戦いは・・・結果は分かっている・・・!)



紅桜はただ一人・・・別の事を考えていた。



「信秀様、信長様は如何なされるので?」

「あ奴は部下と共にこの城を守らせる。竹千代もこちらに呼び寄せよう。・・・鬼頭よ、お主には信長と竹千代を連れて、その足で軍に合流してくれ。・・・ああ、言伝を頼みたい」

「言伝を・・・?・・・了解しました。では、早急に合流できるよう、只今から行動させて頂きます故、これにて失礼致します」



紅桜は一礼し、真っ先に部屋を出た。





































「父上が三河を攻める!?何時だ!?」

「今日からだそうだ。それで信長公には配下と共に古渡城の守護を任せる、とのこと」

「・・・分かった・・・!あたしはやり遂げてみせる・・・!」

「それに伴い、竹千代殿には古渡城へと移動してもらうと、信秀様から仰せつかった故」

「は、はい・・・」



竹千代も了承して、三人で馬に乗って古渡城へ向かう。少々竹千代が出るまでに時間をかけたが。



「それで・・・紅桜。お前も出るのか?」

「出る、とは・・・一体?」

「出陣するのか、と言っている!」

「そうなるな」

「・・・死ぬなよ」

「それくらい心得ている」

「・・・」



移動している間、竹千代は全くの無言だった。

































古渡城。



「・・・信長公、以上が信秀公からの言伝になる」

「・・・美濃の斎藤道三と和解をしろ、と・・・。分かった、和解をすることに尽力しよう」

「・・・ありがとうございます。では、救援へと」

「気をつけて・・・行ってこい」

「あ、あの!」



馬を返した紅桜を呼びとめた竹千代。



「如何なされたかな、竹千代殿?」

「これ、御守です!貴方が無事・・・無事生きて戻ってこられるように・・・!」

「・・・」



竹千代から渡されたのは、表には『必勝祈願』と、裏には『貴方の無事を祈っています』と可愛らしく刺繍された御守り。上手とは言い難いものの、竹千代の心が籠った手作りの御守りだった。



「ありがたく、頂戴いたします。では」



一礼し、今度こそ馬を返して戦場となる小豆坂へと向かった。



「・・・竹千代、お前・・・」

「・・・生きて・・・帰ってきてください・・・!絶対・・・討ち果たされないでください・・・!」






































(大体の位置は分かっている・・・!小豆坂は・・・愛知県岡崎市のところ・・・!位置は把握しているから・・・後は急ぐだけだ・・・!!)



紅桜は馬を走らせていた。戦場は小豆坂・・・紅桜の知る現在で言う所の愛知県岡崎市。そこに向けてひたすら馬を走らせていた。




「信広公・・・彼が家康と交換される・・・!確証までは言わないけど・・・竹千代殿は明らかに好意を持っている人がいる・・・!その好意、むざむざ無駄にさせるわけには・・・!!」






































「信秀様!到着、遅れました!」

「・・・おお、鬼頭か」



陣に着いて紅桜が見たのは、全体的に暗めな織田軍だった。



「何が・・・あったのですか・・・?もしや敗北を・・・!?」

「いや、まだ敗北したわけではない。ただ・・・今川の奴ら、陣を上にとりよった。故に・・・」

「・・・なるほど、優位性はない、ということなんですね・・・」

「・・・そういうことだ」



現在の織田軍は織田信広を先鋒として出陣、上和田に陣を敷いていて、対する今川・松平連合軍は小豆坂の頂上付近に布陣していたため、優位性は今川・松平連合軍にあった。



「・・・して、信広公の状況は」

「芳しくない、とのことだ」



戦況不利。それが暗に告げられた。



「・・・では信広様の救援へと行って参ります」

「・・・頼んだぞ、鬼頭!そろそろここ盗木の近くに来るはずだ、犠牲を限りなく少なく、見事退かせてみせよ!」

「御意に!」
















































小豆坂。ここの麓の陣の中で、一人の少女が戦況に困っていた。



「・・・父上が私に先陣を任せてくれた・・・なのに戦況は芳しくない・・・どうすれば・・・」



少女の名は織田信広。信長の姉であり、この戦いの先陣を任されたのだ。だが・・・



「陣を取る位置を誤り・・・どうにか被害を最小限に食い止めながら退いてはいるけども・・・どうすれば・・・」



その時だった。



「信広様、お逃げください!敵が直ぐそこに!!」

「何っ!?」

「直ぐに・・・ぐあっ!!」



目の前で兵が死んだ。つまり、敵も来た、ということ。



「織田信広!覚悟!!」



目の前にいるのは一人じゃなく、多数。明らかに勝ち目はない。信広の頭に水らの死が過ぎる。



(父上・・・先立つ不孝をお許しください・・・!)



信広は目の前に迫る刃に、自ら犯す不幸を心の中で謝罪した。が。



「横槍御免!」

「なっ、ぐあっ!!」



突然聞こえた声と悲鳴。



「・・・え・・・?」



信広が恐る恐る目を開けると、目の前で自分を討ち果たさんとしていた兵士が死に、その前で他の兵士から自分を守るが如く、馬に乗った男がいた。その男は剣に付いた血を剣を振ることで払い、そして叫んだ。



「全織田軍兵士!本隊は直ぐそこまで来た!焦らず、ゆっくりと退却せよ!」



そんな姿に、信広は心を奪われていた。雄々しい見た目と、その見た目に反しない格好良さに。



「・・・織田信広公とお見受けする」

「・・・は、はい・・・あの、貴方は・・・?」

「我が名は鬼頭紅桜、織田に使える一将です」



紅桜の名を聞き、じっと見詰められた信広は急に顔を赤くした。



「信広公、今すぐ軍を纏め盗木まで退かれよ」

「べ、紅桜殿は一体!?」

「殿を務めます故」



それだけ伝え、紅桜は敵陣へと単騎突撃した。信広はそんな紅桜に惚けていたが、10秒ほどで我に返り、



「お、織田軍!ぜ、全員、本隊のいる盗木まで退却せよ!誰一人として死ぬことは罷り為らぬ!!」



慌てて撤退命令を下したのだった。



































殿を務めた紅桜はたった一騎で今川・松平連合軍と渡り合い、誰一人殺すことなく向かう相手全員を気絶させて悠々と撤退した。この異常とも取れる活躍は少し経ってから全国に知れ渡ることになる。


































盗木まで撤退した先鋒軍は紅桜の帰還を待ち、紅桜が戻ってから今後の方針を決めた。信長が美濃の斎藤道三との和睦に成功、娘の濃姫と義姉妹になったという知らせを聞き、信広とその軍を安祥城に残し、完全に撤退した。




































紅桜の初陣となった小豆坂の戦い、は織田軍の被害は壊滅状態、松平・今川連合軍にも多大な被害が生じるという結果で幕を閉じた。








































・・・が、三河の主導権争いはここで終わることはなかった・・・

次回は竹千代が盛大なカミングアウトをしてくれます。


それが意味することとは・・・?(ヒント:小豆坂の戦いの後の史実通りの事になってます)



さて、今回の史実相違点は・・・



織田信広が女性化している(この時点で既に相違)

斎藤道三との和解が同時進行で行われている上、政秀の同伴が無い



ということくらいですかね?ではまた次回。何時になるか分かりませんが・・・

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