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四幕 吉法師、元服して信長と称す

お待たせしました、吉法師元服の四幕です。


後書きにてまたいつもの史実相違点を。

「・・・今日は・・・吉法師が元服して信長と称す日か・・・」



紅桜は自室で窓を見ながら呟いていた。朝、何時も「稽古だ!」と言って起こしに来た吉法師が来なかったのがそれをより強く物語っていた。



「あの、紅桜様。信秀様が・・・」

「・・・ああ、すまぬ、竹千代殿。直ぐ向かうとお伝え願えるかな?」

「は、はい」



顔を真っ赤にしてとてててと行ってしまう竹千代。何故か逃げるような感じがした紅桜は・・・



「・・・もしかして竹千代・・・俺怒らせちまったか?いやいや、そんなことはないだろ?・・・そうじゃなければ・・・恋心?・・・それも無いだろ。フラグ立てるようなこと一切合切してないわけだし・・・」



静かな自室でそうぼやいていた。


























古渡城。そこには着物を着た少女と二人の男がいた。男のうち片方はその少女の教育係の平手政秀、もう一人は林秀貞。その二人に挟まれて歩く少女は・・・『尾張の大うつけ』と呼ばれた少女、吉法師だ。



「・・・政秀」

「なんでございましょう?」

「なぜ紅桜がいない?」

「吉法師様がお呼びにならなかったからでしょう?「着物姿を見られるのが恥ずかしい」と仰ったのは貴女じゃないですか」

「そ、それはそうだが・・・」



顔を赤くして俯く吉法師。今の彼女はいつものような服装ではなく、ちゃんとした着物を着ていたのだ。織田家家紋を所々にあしらった着物を。



「吉法師様、とてもお似合いなのですから、いつものようになされば無事終わります故」

「だが着慣れていない着物なのだぞ!?恥ずかしくて今にも頭から湯気が出そうだ!!」



憤慨して(顔は茹蛸の如く真っ赤に染めて)秀貞に文句を言い始める吉法師。その横では政秀がやれやれ、といった様子で溜息をついた。






































「・・・信秀殿、遅くなって申し訳ありませぬ」

「なに、気にすることはない。何か思う所があるのだろう?あの吉法師が元服を迎えるというのだ、感慨深いところもあり、まだまだ不安な所もあるのだろう?」



遅れて古渡城に着いた紅桜。その入り口には信秀がいた。



「領主が一家臣のためだけにわざわざ・・・」

「気にせんでくれ。私がこうしたくてしただけの事だ」

(領主が元流浪人の一家臣のためだけにここまで・・・凄い人だ、この人は)



素直に感心していた紅桜。ただ、少々思う所もあった。



(・・・この人が第二次小豆坂の戦いの後に病死する・・・しかも原因は流行病・・・人生ほど無常なものはないって言うけど・・・これ程のものはないって)



後々の事実を知っている紅桜としては、現実の不条理さに心の中で落ち込んでいた。



「・・・ところで竹千代よ」

「あ、はい。なんでしょうか」

「少々問いたい事があるのだが・・・主を見ていると鬼頭の前で顔が茹蛸の如く真っ赤に染まる時があるな。それはが何故か問いたいのだが?」

「え、そ、それは・・・その・・・えと・・・」



自分達の後ろで紅桜が思慮に耽っている間、信秀は竹千代に質問をしていた。その問に竹千代は顔を真っ赤にしていた。



「・・・もしやしたら主は鬼頭の事が・・・」

「へあっ!?そ、その、は、はっきりといわにゃいでくだしゃい!!」



突然大声を上げて信秀に怒る竹千代。・・・が、気迫や威厳など、怒ってます的な感じは真っ赤に染まった顔の所為で一切しなかった・・・


なお、この大声は、紅桜に気付かれていなかった。





























「吉法師様・・・元服なされて・・・」

「これで一人前の武将となるのだなぁ・・・」

「お姿、ご立派にございます・・・!



着物姿の吉法師を見て、元服の儀に参列した家臣一同は色々と呟いていた。



「吉法師さん・・・私より先に大人に・・・くすん・・・」



紅桜の横では竹千代がそうぼやいていた。



「竹千代殿?一体どうなされた、泣き始めて・・・」

「だって・・・だって吉法師さんは今日をもって大人になった・・・つまりややを・・・子を設けても問題ないと言われるように・・・!一歳違いの私はまだなのに・・・うぅ・・・」

「・・・それは・・・なんとも返しようが・・・」



泣いていた理由に何とも言えない紅桜は、困り顔で再び前を見直した。



(・・・史実なら家康の元服は天文24年、けど竹千代の年齢は吉法師と一つ違い・・・史実と違ってやがる・・・!)



何気なく困惑している紅桜。その本人を他所に、吉法師の元服の儀は執り行われた。
































「・・・幼名、吉法師。元服後の諱は如何様に?」

「あたしは・・・今後『織田上総介信長』と名乗る!」



はっきりと、大声で高らかに宣言した吉法師・・・改め信長。その宣言は彼女の今後の決意をはっきりと周りに見せつけたのだった。そして・・・



「では、元服の儀の最後に、僅かでも構いません、髪を」



信長の前に出された短刀。前髪を少し切ればよかったが・・・



「前髪少々などらしくない!あたしは堂々とやらせてもらう!!」



短刀を後ろに宛がい、後ろ髪を肩から下一切をバッサリ切ったのだった。



「・・・お、おお・・・流石「うつけ」と呼ばれたきt・・・いや違った、信長様・・・」

「やることが・・・大胆だのう・・・」



周りからはその行動が突飛過ぎたために、驚きの声が上がっていた。



(・・・流石信長。やることが大胆だ)



紅桜は寧ろ称賛していた。あれくらいしないと信長らしくないと思っていたらしい。

































(これで・・・織田信長が誕生した・・・。次は・・・小豆坂の戦い・・・!そして安祥城・・・!安祥城は家康が織田信広と捕虜交換で連行される・・・確かその筈だ・・・!)



歴史を再確認する紅桜。そしてその横では・・・






























一人の少女がたった今元服を済ませて成人を迎えた信長を他所に紅桜に熱い視線を向ける少女がいた。紅桜の真横にいた、まだ成人となっていない一人の少女が・・・

まず、史実相違点です。



吉法師が元服した後の名前が、信長なのは変わりませんが、史実では『三郎信長』を名乗ってます。が、ここではいきなり『上総介信長』を名乗ってます。そこまでの過程をふっ飛ばしました。





次回は紅桜の初陣。相手は・・・連合軍。


竹千代に関わる一つの通過点です。

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