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二章 紅桜、織田家に登用され新たに少女と相見え

一気に進む気がした第二話です。紅桜がついに織田家に登用されます。・・・ついに、というのもおかしいですけど。


後書きで、史実相違点を上げておきます。

翌朝。信秀は動いた。娘・吉法師を負かし彼女の眼からも良い評価が得られた『紅桜』という男を家臣として召抱えるため。


そして城下町はその家臣が『紅桜』を探し求めて歩きまわっていた。


そしてその家臣らは、紅桜が一宿させてもらった家にも来たのだ。なお、紅桜はとうにその家を出てしまっていた。



「ご老人、『紅桜』という男を知らぬか?」

「紅桜・・・ああ、昨日一晩泊めてやったわい。朝方すぐに出ていってしまったがの」

「左様か。して、何処へ向かったかは?」

「流石に儂はそこまで知らぬよ」




































「・・・尾張、か。まさかここに来てしまうとは夢にも思わなかった。・・・というか来るなんて思うわけがないと思う」



一方の紅桜は城下町が何やら騒がしくなったため、外に出て様子を見ていた。昨日野党返り討ちをして得た金で団子を食べながら。


聞こえてくる声は『紅桜殿!何処におわすか!!』や『紅桜殿の所在を知る者はおらぬか!?』など。



「・・・どうやらここの領主・・・確か・・・織田信秀公だったかな?その人に気に入られたんだろうな。娘を負かした、ということで」



紅桜はそう言って立ち上がり、必要分だけ銭を払ってそこを後にしたその瞬間だった。



「あーっ!」

「・・・ん?」



聞き覚えのある声が聞こえた。昨日何度も聞いた声が。



「見つけたぞ、鬼頭紅桜!父上がお前を探しておる!共に城に来い!!」



そこにいたのは吉法師。昨日散々負かしたので復讐に来たのか、と思っていたら、そうでもなかったらしいと悟る。



「探している?領主殿が私如き流浪人を?」

「そうだ!父上に昨日の事を話したらお前のことを大層欲したからな!」

「・・・やれやれ・・・。領主殿がこれほどの博打を行うとは予想だにしなかった」

「いいから来い!」



吉法師はぐっと紅桜の手を引くとそのまま引き摺るように走りだした。・・・なお、紅桜は普通に走っていた。































「父上!紅桜を連れて来たぞ!!」



連れてこられたのは那古野城。・・・の中。そして領主の前。



(・・・まさか一気にここまで連れてこられるとは想定外だった)

「・・・ほう、そなたが紅桜と申す者か」

「お初にお目にかかります。我が名は鬼頭紅桜、君主に使える事無く流れる流浪者にございます」



紅桜は当初吉法師と会った時と同じように古めかしい言葉を用いて恭しく挨拶をする。



「我が名は織田信秀。本来ならば古渡城を預かる身である」

「それは承知しております。して、何故私を召抱えようと?」



素直な疑問を信秀にぶつける紅桜。



「吉法師から昨日の事を聞いてな。なんでも、吉法師の我儘を聞き、何度も相手をしてやったそうだが?」

「真にございますれば。吉法師様は当初、偶然付近を歩んでいた私めに「相撲で勝負だ」と仰られ、挑まれた矢先、退けば恥となると思いまして、勝負に乗った次第でございます。手を抜かずにいたのは、逆に手を抜くのは吉法師様に対して失礼かと思いますれば」

(・・・ほう、この男、中々どうして、出来る男ではないか。手を抜かずにいたのは、吉法師の心を傷つけず、それでいて満足させるため。・・・優しさも併せ持つ男は、今の世早々おらぬものよ)



信秀は淡々と喋るだけの紅桜を見て、彼の本質を見抜いていた。



「紅桜、当初申していた通り、お主を召抱えたいと思うのだが・・・如何か?」

「本来ならば召抱えると既に決まったもので言うものを・・・何故私目如き若輩者にそのようなお優しいお言葉を?」

「・・・さすがに、不審を持たれてもおかしくはない。そなたを心底欲しいと、召抱えたいと思った、ただそれだけよ」

「・・・なるほど。・・・ならばこの若輩、尾張領主織田信秀公に誠心誠意、お仕えいたしましょう」



紅桜は尾張の織田に仕えることを決めた。ただ、仕えるのは織田というより信秀に、であった。



「ところでそなたは・・・勉学は如何程か?」

「勉学は、それなりには学んでおります。しかし、他者に教えるほどの学は持ち合わせてはいないと」

「少々でもあればよかったのだ。そなたには吉法師ともう一人、合わせて二人の勉学の師となって欲しいのだ」

「・・・私めが、ですか?少なくとも吉法師様には教育係がいらっしゃるのでは?」

「平手政秀の事だな。確かにあ奴は吉法師の教育係。しかし、あ奴だけでは吉法師を抑えることはできんのだ。それに、吉法師を負かした事のあるそなたならば吉法師の歯止めとなろう」

「・・・されば、謹んで拝命させていただきましょう」



こうして紅桜は吉法師とまだ誰かは分からないもう一人の勉学担当となったのだった。



























「まさかお前があたしの師になるとは思わなかったぞ」

「俺も思わなかった。仕えるというのは想定していたが。それでもう一人について教えてもらいたいのだが」

「ああ、そういえば伝えてなかったな。もう一人は竹千代だ」

「・・・竹千代?・・・もしかしたら松平家の・・・」

「よく知っておるな。聞こえは悪いが、竹千代は織田の人質だ。・・・まあ、あたしにとってしてみれば妹のようなものだがな」



吉法師に連れられて竹千代がいるという部屋に向かう紅桜。



「紅桜!後で勝負だからな!!絶対だぞ!!」

「承知した。しかしその前に勉学が優先だ」

「う・・・」



吉法師ははっきりと嫌そうな顔をした。























「政秀!政秀はおるか!!」

「此処におります。・・・おお、そちらの方が吉法師様と竹千代様の勉学の師となられた・・・」

「鬼頭紅桜にございます。平手殿、新参者の若輩の身ではありますが、何卒宜しくお願いいたします」

「親切丁寧な挨拶痛み入ります。私は平手政秀。吉法師様と竹千代様の教育係を仰せつかっております」



互いに挨拶を交わす紅桜と政秀。その横には大人しめな女の子がいた。



「竹千代、お前も何か言ったらどうだ?」

「・・・」

「竹千代!何を呆けておるか!!」

「えっ!?え、あ、そ、その、は、初めまして・・・。ま、松平・・・竹千代と申します・・・」



今まで何に呆けていたのか、竹千代と呼ばれた少女は緊張した様子で、最後は顔を赤くして言う。



「一体如何した?政秀には直ぐに名乗れたお前が紅桜相手に直ぐ名乗れないとは」

「そ、それは・・・その・・・」



竹千代は言えなかった。まさかたったあの一瞬で見惚れてしまったなどとは。



「とにかく、あたし達の勉学の師となる紅桜だ」

「鬼頭紅桜と申します。以後、お見知り置きを」

「こ、こちらこそ、宜しくお願いします・・・」



こうして紅桜は松平竹千代・・・後の徳川家康と出会った。






















だがこの出会いが・・・



































本来彼女が歩むべき未来を大きく変えてしまうとは、このとき誰もが知る由もなかった・・・

今回の史実相違点です。大雑把に言うと、大体が相違点になります。



家康(現時点竹千代)が信長(現時点は吉法師)とほぼ同い年


(既に分かっていると思いますが)信長・家康の性別が逆転している



なお、これに影響する形で数名武将が史実と大きく離れます。




次回はある平和な一日と、その平和が崩落するきっかけを。


お楽しみに。

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