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十一幕 重鎮の死、悲嘆の姫 隠れて動くもう一人の姫

お待たせしました、そして明けましておめでとうございます(遅すぎという突っ込みは受け付けませんぜ)。


今回は・・・新年一発目と言うのにかなり重い話になってます・・・。信長のもう一つのターニングポイントともいえる今回。


そしてその裏ではある計画が・・・

藤吉郎が仕えるその前から、尾張では事件が起き続けていた。理由は単純、信長・・・姫香の家督相続を良しとしない者がいる。その筆頭が織田家では『柴田の伯父貴』『鬼柴田』と呼ばれた柴田勝家や林秀貞・通倶みちとも兄弟だ。彼らは姫香の妹・信行こそが家督を継ぐに相応しいとして担ぎあげていた。


また、姫香の(本性隠しによる)奇行も相変わらずだった(とはいえ紅桜・・・桜也の前に限っての話だが)。









































その現状に、強く心を痛める者がいた。それは・・・平手政秀。姫香の教育係であり、また姫香の事を彼女の亡き父・信秀と同等に知る人物。



「・・・信長様の奇行は相も変わらず、挙句には信秀様の家督は信長様に相応しくないと反発する者も増え・・・私には到底、力が及ばぬ状態になり申した・・・」



政秀は、自室にて既に世を去った信秀に現状を嘆くかの如く伝えていた。現状、織田が二分しているような状態の事、姫香のうつけが治らないこと等々・・・兎に角色々と報告をしていた。



「・・・私にはもう、この状況を止める術を持ち合わせておりませぬ・・・されば、私も信秀様の元へ馳せ参じましょうぞ・・・」



政秀は白装束に着替え、遺書を書き始めた。一通は自分の息子たちへ、一通は主であり教えてきた存在、姫香に。そして最後の一通は・・・政秀と苦労を分かち合うどころか政秀以上に苦しんでいると思われる桜也にだった。



「・・・この程度でよかろう・・・。皆の者、このような形で死ぬ事申し訳ない・・・。信長様、先逝く不孝をお許しくだされ・・・。紅桜殿・・・どうか、どうか姫様をお頼み申します・・・」



この言葉が、政秀が最期に発した言葉となったのだった・・・









































〈きゃあああああああああああ・・・〉


「っ!?」



翌朝、突如聞こえた悲鳴に飛び起きた桜也。そのまま声のした方向に駆けだした。



「なにがあった!?」

「ち、血が・・・政秀様の御部屋から血が・・・!」



座り込んでしまっている侍女から話を聞き、その先を見た。侍女の言う通り、襖の隙間から血が染み出ていた。



「・・・政秀殿の・・・まさか!?失礼!」



桜也は一応の断りを入れ、襖を開けた。その中には・・・



「・・・白装束の・・・政秀様・・・!?」

「・・・とりあえず、誰か男を呼んできてくれ。・・・これは・・・大変なことになった」

「はひゃいぃ!」



侍女はどうにか立ち上がり、バタバタと走り去っていった。



「・・・政秀さん、史実通りとはいえ、自殺するなんて・・・まだ、まだ姫香の行く末を見守るという大切な仕事があっただろうが・・・!信秀さんから託されてただろうがよ・・・!なのに・・・なのに・・・っ!」



桜也は正座したまま生涯の幕引きをした人物の亡骸を見て、床を思い切り殴りつけた。








































政秀の死は、瞬く間に尾張中に広まった。風の噂、というのもあったが、政秀の人の良さも理由にあった。・・・が、彼の死の原因が、彼が仕えた1人の姫にあるというものまで広まっていた・・・









































「・・・政秀が・・・死んだ・・・!?」



侍女から告げられた話・・・政秀の死。信長はその一言を聞いた瞬間、何もかもが崩れ去ったような感覚に陥った。



「・・・すまない、ちょっと離れていてくれ」

「は、はい・・・」



嫌な予感が頭を過った紅桜は、侍女を遠ざけることにした。



「・・・嘘だ、政秀・・・政秀ぇっ!いやあああああっ!」

「姫香、落ち着け!確かに政秀さんは死んだ、けど姫香を悲しませたい為に死んだと思うのか!?」



桜也の予想通り、泣き喚く姫香。相次ぐ親しき人の死に耐えきれず、精神的限界を迎えてしまったのだ・・・



「まさひで!まさひでぇぇっ!!」

「姫香っ!!」

「だって、まさひでが!まさひでがぁ・・・」

「姫香、お前まで死んだとして、政秀さんの遺志を継ぐのは誰だ!?家督を継いだのは誰だ!?」

「・・・ぁ・・・ぅ・・・」



思い切り叱りつける桜也。こうでもしないと最悪の事態を引き起こしかねないと思ったためである。その効果があるかは定かではないが、姫香は泣き止んだ。



「・・・兎に角今は政秀さんを手厚く葬ってあげるのが先決だ・・・。墓前で誓え、天下を取り平和な世を創ると政秀さんに・・・」

「・・・うん・・・!」










































政秀の葬式は、那古野にて慎ましやかに行われた。信秀の時と同じく織田家の面々に慕われていた政秀は、その葬式に参列する者が多数いた。



「・・・政秀様・・・自害なさるとは・・・」

「ボクも・・・まだ教えてほしいことがあったのに・・・」



政秀に支えられていた美夜も、織田に仕官して日の浅い藤吉郎も、同様に嘆いていた。・・・が、とりわけ落ち込んでいたのが・・・



「・・・政秀・・・」



姫香だった。長く政秀に教えられ、また支えられてきた彼女からすれば、政秀は「もう一人の父親」だったのだ。



「・・・皆、今から言う言葉を聞いてくれ。墓前ではないが・・・あたしの決意だ。あたしは・・・あたしはこの戦乱の世を統一し、平和な世を創り上げる!志半ばで散っていった父上や政秀の分まで・・・この命散る時まで戦い抜くと誓う!」



姫香の『織田信長』としての決意は、今までうつけと見て取れた彼女の見かけを払拭するに足るものだった。



「信長様・・・ご立派になられまして・・・」

「全くもって・・・政秀様も報われましょうぞ・・・」



姫香の決意。それを見た藤吉郎と美夜は・・・



「・・・姫香様、微力ながら私も尽力させて頂きますね」

「ボクも頑張るよ!」



姫香の決意した目標を手伝うと意気込んでいた。



(・・・姫香、お前を慕ってるやつはこんなにいるんだ。今後はそう簡単に死ぬなんて言うなよ)



桜也はそう思っていた。









































「・・・信長がまた力をつけようとしている・・・」

「・・・優香様、こうなってはもう、信長を殺すしか・・・」



優香と呼ばれた少女は、自分の周りにいる3人を見渡す。



(本当なら家督を継ぐのは姉上でいいのに・・・。私はそんな器じゃないよ・・・)



そう、心の中では思うが、家臣の前、弱気な姿を見せることはできない。



「(・・・姉上、ごめんなさい・・・!)・・・今はまだ時期尚早よ、落ち着きなさい。私たちの戦力が整ったら・・・












































・・・姉上を討って私が織田家を継ぐわ」

まずは前回のと合わせた相違点です。


今回の相違点は・・・秀吉(藤吉郎)の士官と政秀の自害の時期が逆転している、ということです。


本来は政秀自害→藤吉郎士官・・・という順ですが、ここではあえてそうしました。




次回は・・・姉と妹の確執・・・のようなものです。前編・後編と二部構成となってます。お楽しみに。

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