序幕 紅桜、戦国乱世に跳躍す
(・・・終わったか・・・、俺の人生も・・・)
トラックが迫る。そのトラックの主は少年に気付いていない。居眠りをしているからだ。
そして少年は、トラックの前に命懸けで飛び込んでいた。
「・・・いい加減、高校に処分を食らいそうだな・・・」
午後5時30分。少年は一人商店街を歩いていた。彼の名は『鬼頭 桜也』。何故彼が処分を食らいそうなのか。それは数分前のことだ。
一人の中学生が多数の高校生にカツアゲされていたのを助けるために喧嘩を起こし、全員を再起不能にしてしまったのだ。それが一番の問題だ。
「・・・まあいいか。あの中学生を救うことが出来たんだ。気分もいいってもんだ」
彼はすっきりした顔で、いい気持ちで歩いていた。
そして交差点に差し掛かった時だった。彼の目に、買い物袋を片手に横断歩道をゆっくりと歩む老婆の姿が映った。
「・・・あのおばあさん、大変そうだな・・・あれは!?」
そして桜也が見たのは赤信号なのに速度を落とす様子が見られない大型トラックだ。
「あのままだと・・・マズい!人身事故ひき逃げコースまっしぐらだ!!・・・間に合え・・・!!」
老婆の危機を悟り、その横断歩道まで一気に駆ける。
そして桜也はおばあさんを突き飛ばし、自分が直撃コースに入ってしまった。
そして、冒頭に戻る。
(尽きたか・・・俺の運命も・・・。しかし・・・自分で言うのもなんだが・・・いい生き方をした・・・)
徐々に迫るトラック。それが目前に迫った時。
「・・・この人生、悔いはねぇ・・・」
そして、ドン、という音が鳴る。辺りから悲鳴が聞こえる。
桜也はトラックに撥ねられ、下敷きになる。
そしてそのトラックが通ったその後に・・・
桜也の体はなかった・・・
(・・・ここは・・・?やっぱり俺は・・・死んだのか・・・?だとしたら・・・ここは・・・地獄か・・・)
体が痛む・・・という感じはしない。トラックに撥ねられたのに、だ。
「・・・俺も、地獄の閻魔にようやく会うってのか・・・。へっ、悪くねえな・・・」
目を開けて、起きあがる。しかし、おかしい。
「・・・何だ?地獄にしちゃ・・・風景がしっかりしてるな・・・。それに・・・城が見える・・・?」
そして、異変に気付いた。
(違う、ここは地獄じゃない!もしかしたら・・・俺は・・・俺はタイムスリップをしたのか!?ここは・・・きっと昔の日本!城があるということは・・・室町か戦国時代!俺が轢かれたのは位置的には尾張・・・織田の御膝元か・・・)
一瞬で結論を叩き出した桜也は立ち上がり、城を仰ぎ見る。
「・・・こんな所でグダグダしているわけにはいかないな。とりあえず、情報を得るために城下町に行くか」
桜也は城に向けて歩み始めた。
『義賊の紅桜』、乱世に降臨す。
時代の知識を持ったこの男がいかに乱世を生き残るのか。そして、どんな出会いを果たすのか。
その時はまだ・・・
神のみぞ知る、としか言えない。
ということで、現愛知県・・・尾張へと跳びました。私の地元だったら美濃か飛騨が本元なんですが、やっぱりそれに近いとこでしかも有名な尾張で。
どうなるかはお楽しみに、ということで。
次回は・・・出ます。「あの人」が。・・・とはいえ、まだ元服済ませてないですけど。そして『紅桜』が本格的に動きます。