『永遠の推し』
ずっと遠い世界の人だと思っていた“推し”。
画面の向こうで笑うだけで、今日の全部が報われるような存在。
そんな彼と、まさか自分の人生が交差するなんて、誰が想像しただろう。
これは、夢と現実の境目がふっと溶けた日に起きた、忘れられない物語。
私には、ずっと好きな俳優がいる。
本気で“結婚したい”くらい。
彼女はいないらしい──だから、もしかしたら…なんて、馬鹿みたいに考えてしまう。
そんなある日、握手会が当たった。
しかも五分も話せるという。
前日は気合を入れて、彼の好みに合わせたメイクと服にした。
当日、順番が来るまでは手が震えるほど緊張していた。
番号が呼ばれて、私は部屋に入った。
そこには、キラキラ光る“星”みたいな彼がいた。
現実とは思えなかった。
「可愛いね」
小さな声でそう言われて、私は思わず聞き返した。
「え、今なんて?」
「なんでもないよ。ほら、話そう」
夢のような五分は、あっという間に過ぎた。
帰り際、スタッフに手渡された小さな包み。
中には、彼が握手会用に用意してくれた小さなブレスレットと、短いメモが入っていた。
そこには電話番号と「また話そうね」の文字。
──こんな展開、ある?
震える手で番号をかけると、本人が出た。
「もしもし、希夜? 声、壊れそうなくらい緊張してるけど」
「え、あの…どうして…」
「今日みたいな美しい人、初めて出会ったよ。よかったら、付き合ってほしい」
胸が跳ねて、息が止まって、世界が白く光った。
死んじゃうかと思った。
私は震えた声で「はい」と答えた。
──これは、夢みたいで、本当にあった私の物語。
「こんなこと、本当にあるの?」って何度も自分に聞いた日だった。
胸が痛いくらい嬉しくて、苦しくて、怖いくらい幸せで。
あの日の光も、震えも、息が止まるほどの瞬間も、全部ぜんぶ宝物。
もしこの物語を読んでくれた人が、
“こんな奇跡、いつか自分にも来るかも”って少しでも思ってくれたなら、
それだけで十分くらい、私は幸せだ。
これが、私とあの人が出会った、最初の物語。




