表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/26

Ep.18 逮捕ぉ?またぁ?

 お父さん、お母さん、フィオナは一体何をしてしまったんでしょう?

 検査室でロシュフォールさんと実験をしていたと思ったのですが、目の前には嫌な思い出とそっくりな牢屋の壁が見えます。あ、でも前よりベッド少しだけ柔らかいかも。毛布も追加されてるし。冬仕様でしょうか?

 後、立哨の騎士さんが凄く残念そうな顔でこちらを見ているんです。

 彼は私の知らない何を知っているというのでしょうか?

 

(頭いったぁ……)

 

 なんか、悪酔いするお酒を飲んだ次の日のような激しい頭痛がする。

 あれ……?

 お酒飲んだ……?

 いや、私、実験してたよね?

 

(…………)

 

 仕事してましたー。

 アルフレッドさんに呼び出されてー、

 ごにょごにょあってー、

 検査室で実験しててー、

 危ないと思ったらしゃぼんの香りして……

 あれ?

 その後、ド修羅場だったよね……?

 

(…………)

 

 修羅場どこ行ったんだろう?

 その後なんかすんごいえっちな夢を見た気がする。

 いつもの安心するしゃぼんの香りに包まれて嬉しくなっちゃったまではいいよ。

 そこから何した?

 ノエル君を押し倒して……えっちにイジメ倒す……

 え? 痴女?

 待って。

 夢……だよね?

 あの時、もうあかんわこれってなって、何したんだっけ?

 

(すんごい舌がとろけるようなブランデーを……)

 

 あ”ぁぁぁあ”あ”あ”ぁあ”ぁ——------------------!

 

 床に蹲って頭を抱えた。

 いや、もう頭をガンガンに打ちつけたね!

 何してんの! フィオナ!

 待って、あの時、後ろにアルフレッドさんいたじゃん!

 え?

 あの痴態をずっとアルフレッドさんの前で展開してたの!

 ノエル君、なんで強引にでも止めてくれないの!

 頬赤らめて「待って! フィオナさん!」じゃないでしょうがよぉぉぉぉ!

 それから、アルフレッドさんも止めてよぉぉぉぉ!

 

(社会的に死んだ……)


 呆然とする。

 言葉にならない。

 

 私はもう、この牢屋から一生出ないぞ!

 むしろ出さないで下さい。

 恥ずか死んで生きていけないよ!

 お父さん、お母さんごめんなさい。

 フィオナはこんな破廉恥な娘じゃないんです!

 二日酔いの頭痛と頭を打ちつけた痛みで涙出てきた。

 立哨の騎士さんがギョッとした顔をしてこっち見てるよ。

 もっと残念そうな顔するのやめろよ。

 

(にしても、痴態のせいで猥褻罪にでもなった?)

 

 ん〜、公然猥褻?

 多分違う気がする。

 大体脱ぎかけはしたけど、脱いではない。

 私の貧相な官能力だとあの程度しかえっちな発想できないのよ!

 まだ……、キス以上したことないんだから!

 悪かったわね! この年で!

 私、今度はなんで牢屋にいるんだろう?

 今度は何やらかし……いや、もう既にやらかしてるだろとか言わないで。

 前回はちゃんと入る前にベケットさんが説明してくれたじゃん!


『起きたら牢屋! 扉を開いたら即尋問!』


 とか新しくないですか? 新しい物語のネタとかに使えませんか、そうですか。

 高窓からは薄明かりが差し込んでいるけれど、爆睡していたせいで今の時間も分からない。

 

「あー…………」

 

 頭痛い。

 落ち着いて考えようとした時、隣から押し殺した泣き声が聞こえた。

 声の感じから女の子だ。

 なんで牢屋に女の子?


 私ほどの牢屋のプロともなると、最早牢屋の構造にも詳しい。

 ここにはベッドの陰に通風用の穴が手のひら一枚に足りないくらい開いている。

 そこめがけて床に寝っ転がるフリをして顔を近づけた。

 白くて薄い手のひらが見える。

 ぎりっぎり指を伸ばして気付いてもらえるかな?

 指をへんな形に突っ込んだからつっちゃう! 気付いて!


(———!)


 手がさっと引っ込められ泣き声がやんだ。

 気付いた?

 私より小さい手がそろそろとこちらに差し出される。

 安心するようにそっと握ってあげる。

 なんでこんなところにいるかは分からないけど、不安だよね。

 私もだよ。

 そんな気持ちが伝わればいい。


「もし、親切な方、先ほど音がしていましたが、ひどい事はされていませんか?」


 甲高い澄んだ綺麗な声がする。

 そして話し方がとても丁寧だ。

 貴族の女の子?

 しかもこちらが社会死に悶え苦しんでいたのを心配してくれている!

 なんて優しい子なのだろう!


「大丈夫です。心配してくれてありがとう」


 こちらも小声で返した。


「高貴な方とお見受け、って見えてないか、貴族の女の子がなんで牢屋に?」


 握っていた手が一瞬震えた。

 何か怖いことでもあったのだろうか?


「それが、お……お茶を飲んで眠ってしまったと思ったら、王都の街路にいたのです。

 私の名前を言って、そのお……お家に返してもらおうと思ったら、名前を騙るとは不届きなって反省するまで牢屋にいろって言われて……正直に名前を言うまで返さないって……。

 最初からちゃんと名前を言ったのに信じて貰えなくて、証明するはずのお……お家の紋章が入ったペンダントも無くて……」


 あー。それは辛い。

 ちゃんとしたところのお嬢さんみたいなのに、こんな話ってあるだろうか?

 お家の人、探したりしてないの?


「きっと、お父さんもお母さんも心配してるよ。早く帰れるといいんだけど……」


 私の言葉に今の状況を思い出したのか、押し殺した嗚咽が聞こえる。

 まだ子供に聞こえるのに本当にしっかりした子だな。

 普通なお子様精神なら泣き叫んでお家に返してって言ってもいいくらいなのに。

 

「そうだ! いい事、思いついた!」


 私は着ていた薬剤師のローブを脱いだ。

 細く畳めばぎりぎり通りそう。

 

「これ、そっちから引っ張ってくれる?」

 

 袖の部分とかで引っかかったけど、なんとかぎゅうぎゅうに押し込んで引っ張ってもらう。

 通った!

 

「これ……薬剤師のローブ?」

 

「あ、よく知ってるね。私、フィオナ・ベルウッドって言うの。

 私がここにいるってことは、きっとノエル君が助けに来てくれるから。

 そのローブ被って、私のフリして助けてもらって。

 ノエル君はとても信用できる人だし、困ってる女の子を放っておかないから大丈夫」

 

「フィオナ……妖精さん? ノエル……?」

 

「妖精……じゃないけど、ただの薬剤師だよ。

 私がここにいるから、ローブ着て、フードもしっかり被ってね。

 それから、上から毛布巻いて少し眠るといいよ。

 歌でも歌おうか?」

 

 もう一度手が重なる。

 少しでもこの女の子が元気になって、ノエル君がお家を見つけてくれるといい。

 

「ありがとう、フィオナさん。

 このローブ、甘い匂いがする。

 安心します」

 

 自分より小さい女の子が気丈に頑張ってるのに、大人の私がしゃんとしないでどうする。

 感謝を伝えなきゃいけないのは私の方だ。


 社会死がなんだ!

 どうせ痴態を見たのはノエル君とアルフレッドさんだけよ!

 外に出てもきっと生きていける!

 大丈夫よ……。

 

 私は私で毛布を頭から被ってベッドの上に蹲った。

 うつらうつらしている間に立哨の騎士さんが交代したようだ。

 あの残念顔の騎士さんじゃなくなっている。

 多分、朝食と思われる食事が出たが顔バレしたくなくて食事には手をつけなかった。

 あとは私が名前を呼ばれても反応せずにやり過ごせばなんとか隣の女の子出してもらえないかな?

 最初の尋問がノエル君であるかどうかは賭けだけど、私に繋がりのある人だったならなんとか助けて欲しい。きっと女の子のお父さんもお母さんも凄く心配しているはずだから。

 

 私ほどの牢屋のプロともなると、尋問に来た時どういう手順かはすでに覚えている。

 まず、上から伝達の騎士が来て、立哨の騎士に口頭で伝える。

 尋問が必要な人間の名前を呼ぶ。

 出ろって言われるから、扉の前に立つ。

 すると、騎士が鍵を開けて手錠をかけられてついていく。

 こうよ!

 だから、女の子が「フィオナ・ベルウッド、出ろ!」って言われたら返事するだけ!

 囚人が中で別人になりすますなんて考えてないもんね。普通。

 

(上手く行け-----------!)

 

 騎士が来て立哨の騎士に耳打ちをする。

 さぁ、誰?

 

「フィオナ・ベルウッド、出ろ!」

 

 反応しそうになる体を必死で抱きしめた。

 隣からするすると衣擦れの音がする。

 と、隣の扉が開く音がした。

 

(よし、いけた!)

 

 少し小さな背に薬剤師のローブを深々と被った女の子が騎士の後について通り過ぎた。


(ノエル君、この子助けてあげて!)

 

 お願い!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ