対
―ねぇ、この世界ってさ、紙一重という名の『対』で出来ていると思わない?
オセロみたいにさ、「白」と「黒」。
他には…
「好き」と「嫌い」 「裏」と「表」 「自然」と「人工」 「硬い」と「軟らかい」
「寒冷」と「温暖」 「生」と「死」 「善」と「悪」 「光」と「闇」 「前」と「後」 etc…
…まぁ、溢れるくらいたくさんあるんだけどね。
対になっているって事は“元の存在”から“対の存在”に変わるかもしれないんだよ。
分かるかい?
例に「好き」と「嫌い」。
―もし君に今、好きな人が居るとする。
その好きな人に毎日毎日暴力されたり、悪口を言われたりする。
いわゆるイジメだ。
君だったら、その時どうする?
耐えられる? Mだったら問題ない? 恐怖を抱く?
対応は人それぞれによるよ。
俺が予想するに君は、その人から離れていくだろうね。
離れていかなかったら…?
そんなの俺は愛でも、恋でもないと思うな。
暴力をされても、悪口を言われても、その行いを愛や構ってくれている、と
受け止めるならば、ただの狂気か自己満足だと俺は思う。
だってさ…いや、この話はまた後にしよう。
長くなるから。
話を戻すよ?
離れていくと言うより、逃げていくだね。
やっぱり人ってさ、必ず心の奥底では恐怖を抱くんだよ。
逃げたい、逃れたい、助けてほしい、怖い、恐い、嫌だ、辛い、苦しい、とか
そんな感情が無意識のうちに心の奥底で悲鳴をあげるんだ。
だからこそ、恐怖を抱く。
そして、避けるように逃げていく。
この時点で、もう「好き」から「嫌い」に変わったハズだよ。
この時点じゃなくても、変わるハズ―――
ほらね。
変われるモンなんだよ、“元の存在”から“対の存在”に。
それも、簡単にね。だから、紙一重なのさ。
だから、この世界は『対』だって俺は言えるんだよ………