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恋愛日記  作者: 椎葉碧生
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  甘糟美羽の回想

施設で案内された、蓮君が寝泊まりするお部屋。

病室よりも身近な、居ても窮屈ではない程度の整えられた室内だった。

蓮君はベッドの脇の机とセットの椅子を引いて座る。

柊君は蓮君に対面する形でベッドに腰掛けた。

私はと言うと、彼等の傍らで直立していた。


「元気か。」

「上々に見えるか?」

蓮君は憎まれ口を叩く。


少し、痩せた体が痛々しい。

私の体の傷は消えた。それでも蓮君の傷はきっと、消えない。

「蓮君・・・私はずっと蓮君の気持ちに甘えてきました。・・・どうしたら償えるのでしょうか。」

「・・・。」

蓮君は膝の上で自分の両手の指を組み合わせてそれを見つめていた。

「俺はきっと又、美羽を苦しめるよ。」

顔を上げない蓮君の声には抑揚が無くて、きっと本心じゃないと思えた。

それは、長い年月の蓮君を私が知ってるから。

「今でも後悔してないよ、美羽に薬を飲ませた事。死ねば良いと思った。本心だよ。」

「・・・蓮君、私は蓮君には応えられない。」

「柊が居るから?それともロイ?」

「蓮。」

柊君が蓮君の揶揄を制止する。

「柊君と蓮君は私にとって大切なお友達です。」

「聞こえが良いね。」

「かけがえのないお友達です。初さんや賢太朗さん、紗羽ちゃんの次に私を想っていてくれる

 大切な存在です。都合が良いかもしれませんが・・・失くしたくありません。」

「・・・どうして?こんなに傍に居たのに?!どうして同じ顔なのに俺じゃなくて柊?

 どうして会ったばかりのロイ?!俺って何?」

蓮君の感情が一気に放出する。

これが、蓮君が抱えてきた気持ちなんだと痛感する。

「・・・悪い、出てって。未だ頭が痛いんだ。」

絞り出した声が苦痛に満ちていて、私から離れてこんな場所に居る事を望む蓮君が触れれば粉砕して

しまう程脆い刃に見えた。


それでも。


私は今、きちんと向き合いたい。


もう逃げたくない。


誰かを傷つけたくない。


私は蓮君の頭部を胸に抱えるように抱き締めた。

「離れたくありません。」

きっぱりと私は気持ちを言い放った。

振り解かれても突き飛ばされても何度だって、こうして抱き締める。

勝手だけど、そういう距離に居たいのです。

蓮君は私の腕を肯定も否定もしなかった。


「蓮君と柊君の間は、私の居場所にして下さい。私の心を許せる二人で居てくれませんか。」

これは本当に単に私の我儘なんだけれど、蓮君・柊君と咲は全く別の大切な形。

きっと紗羽ちゃんにだって理解するのが難しいかもしれない位の微妙なラインなのだ。

「俺はそれが良いと思う。」

柊君の優しい声がした。

「蓮は?」

「・・・。」

蓮君の右手が私の腕に軽く触れる。


「それで良い・・・それが良い。」

涙を堪えているのか声が少しくぐもる蓮君。


私の大切な幼馴染。


蓮君と、柊君。


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