88)あに?
「美羽っちから何か聞いてる?」
ママがキッチンでロイへの紅茶を淹れている。
リビングのソファに居場所を移したあたし達は、ママに聞こえないように言葉を交わす。
「はっきり聞いた訳じゃない。ただ柊とは良い関係になれたんじゃないの?」
「そぉ・・・。」
「お前自分から動きたくてウズウズしてんじゃねーの?」
ロイがくつくつと笑う。
(むぅ)
「前はそうだったけどさ・・・何かそうしないと美羽っち、素敵な人捕まえられないんじゃないかな
とか心配したりしてね。」
「シスコン。」
「ロイが現れる迄、美羽っちには結界があったんだよ。」
ロイが怪訝な顔をする。
「はぁいお待たせ~♪」
「ありがとう、ママ。」
「いやぁん咲ちゃん、ママだなんて♪こんな可愛い息子も良いわね。」
「・・・んじゃ、お兄ちゃんか。ロイっち☆」
ロイが軽い舌打ちをする。
(何で舌打ちよっ)
美羽っちが家に帰って来たのはそれから2時間程経ってからだった。
甘糟ファムプラスロイの5人でテーブルを囲んで和気藹藹とママの手料理を食べて、ロイは帰って行った。
あたしはお風呂から上がって、美羽っちのドアをノックする。
「蓮兄・・・元気だった?」
「紗羽ちゃんも会いに行って下さいね、嬉しいと思いますよ。あ樋口君も一緒だともっと良いかも
しれないです。」
「うん。」
「・・・紗羽ちゃん。色んな事が起きました。私は咲に会って強くなりたいと思ったし、柊君の想いを
知って彼を赦したいと思いました。それから蓮君の気持ちを利用した事を今日、謝罪してきました。
赦して貰えるかどうかは判りません。ただ本当の気持ちを蓮君に伝えたつもりです。」
「うん。」
美羽っちの真摯な言葉はグッときた。