65)EXCUSE ME
あたしは購買でパンとパックジュースを購入すると急いで中庭に向かう。
そこは美羽っちが何時ものようにお弁当を食べる場所な筈で・・・。
「・・・美羽っち、一緒に食べて良い?」
「紗羽ちゃん!勿論です。」
あたしは備え付けの木製ベンチに座る美羽っちとロイの間にお尻を割り込む。
「失礼します。」
ロイは一向に譲る気がないので、美羽っちが腰を少し浮かせ、あたしの為の場所を確保する。
「桃ちゃんは良いんですか?」
「うん、今日は別の子と食べてるから。あたしも明日からお弁当にしようかな。」
美味しそうな美羽っちのお弁当を覗き込みながらあたしは指を咥える。
「じゃぁ作りますよ?1個作るのも2個作るのも一緒ですから。」
「3個は?」
ロイの手が、あたしのジュースに伸びてきて奪っていく。
パックの背からストローを押し出すと差し込み口にそれを差し入れ、あたしに手渡す。
「咲も食べますか?」
「うん食べたい。家政婦の作る食事ちょっと合わないんだよね、なんか。」
(何この非現実的な”家政婦”って!)
あたしが冷たい視線をくべるとロイが”寂しそうな顔で”笑う。
「ママはイギリスに居てね。家の事はハウスキーパーが全部やってるんだよね。」
「お父様のお仕事とは言え、お母様も寂しい思いしてらっしゃるでしょうね。・・・咲も。」
美羽っちは確実に俺俺詐欺に遭うタイプだとあたしは確信する。
完全にコロリと騙されてますよね?
「ロイは、彼女居ないの?綺麗なお姉さん系とか。」
あたしはパンの袋を両手で開く。
「今は居ないけど、何でそんな事聞くの?紗羽。」
「ロイみたいなイケメンだったら引く手数多だと思って。ね美羽っち?」
「はい、そうですね。」
美羽っちは満面の笑みを返してくる。
そして口の中に卵焼きを放り込む。味わう姿もさっきと同じ笑みで。
あたしは少し安心する。
美羽っちはロイを”哀れな異人”さんだと思ってるようだ。