61)罪の告白
「・・・どぉ・・・て?どうして柊ちゃんが美羽っちを助けなかったの?その時一番近くに居たの
柊ちゃんだったって事でしょ?」
蓮兄の嘲る様な笑い声が聞こえてきた。
「俺も思ったよ、コイツそのおっさんが怖いのかってその時は思った。でも暫くしてそうじゃないって
解った。紗羽、柊はね、俺に”美羽を譲った”の。」
「はぁ?!」
「柊も美羽が好きで二人は両想いだった。だけど、柊は美羽より俺を選んだ。俺の為に、美羽を
守る役を譲ったんだ。・・・でも、それだけで小さな恋の物語は終わらなかった・・・。
美羽は変わった。紗羽は覚えてるかどうか解んないけど、あの日迄の美羽は、今の紗羽と同じ様に
天真爛漫で、正義感が強くて、たっくさんの友達が居た。」
「うそ。」
確かに昔のアルバムを見る限り、美羽っちは大きな口を開けていっぱい笑ってる写真ばっかりだった。
それが、いつの間にか写真自体が減って、カメラのレンズを見据えてるようなそんな写真が増えた。
「・・・いたずらされた・・・の?美羽っち。」
どちらにでも無くあたしは聞いた。怖くてパパやママにも聞けなかった美羽っちのあの日の事。
「多分性的ないたずらは無かったと思う。ただ俺が走って美羽を奪い返した後、走ってる途中で
気絶した。目が覚めたら、尋常じゃないくらい、そのおっさんと繋いでた左手を風呂場で
洗ってたって初さんが言ってたのを覚えてる。」
「蓮・・・。」
柊ちゃんが口を開くのと同時に、カーペットに額を擦りつける様にして土下座した。
「蓮、頼む。美羽を守ってやって欲しい。ロイの事だ。あいつが美羽を壊すって言ってるらしい。」
「ちょ・・・柊ちゃん!!」
あたしが蓮兄を見ると、その視線が物凄く痛い。
「あ、あの・・・蓮兄・・・それ本当の話・・・だけど、あたしは美羽っちを守って欲しい
だけで、ロイをどうこうしろって言ってないからね?無茶しないでよ?!」