52)必要性
園芸部にロイクンを置き去りにしてあたしは美羽っちを確保した。
校舎内に戻る途中、あたしは問い詰めた。
「美羽っち、どうしたの??あれほどロイクンの事怖いって言ってたじゃない!」
「・・・心配かけてごめんなさい、紗羽ちゃん。・・・咲のお父様、調香師でお花や草木に詳しい
んですって。それで・・・。」
あたしは美羽っちの言葉をぷつりと遮った。
「お花を好きな人に悪い人は居ないって言いたいの。」
自分でも驚くほど、冷たい調子だった。
「紗羽ちゃん・・・?」
あたしは両手で美羽っちの両肩を揺さぶった。
「最初に怖いって思った直感何処行っちゃったの?それ間違いじゃないと思うよ?真希ちゃんだって
あたしだってロイクンには近づかない方が良いって解るよ?!」
美羽っちは困惑していた。
「で・・・でも。」
「必要以上にロイクンに近づいたら駄目だよ!」
「僕も同感。」
その声に振り向くと蓮兄が片手で壁に凭れて、その額には小さな汗が光った。
「あいつは、美羽で遊んでるようにしか見えない。」
「蓮君まで・・・。」
「ね美羽っち!これから必ず蓮兄とか柊ちゃんとか真希ちゃんと過ごすんだよ?」
美羽っちの肩に添えていた手を、美羽っちが静かに払い除けた。
美羽っちは床に目を落としたままで、身体を小さく震わせる。
「美羽っち?」
「咲は、私が必要だって言ってくれました!」
顔を上げてあたしに言いきる美羽っちの瞳に強い意志が感じられた。
蓮兄が、美羽っちの右手首を掴み上げる。
「・・・僕は?僕だってずっと美羽が必要だって言ってるのに?」
「違う・・・蓮君の”必要”と咲の”必要”は違います。彼は、私を友人として必要としています!」
(・・・はぁ?!)
あたしは開いた口が塞がらなかった。
美羽っちがあまりにも真剣に思い詰めてるから、どんな言葉を並べるか聞いていたら
・・・それですか??
(んな訳ないじゃんっ!騙されてるっっ)