47)オッドアイ
ロイクンは当たり前の様に美羽っちの横に椅子を寄せ、座った。
美羽っちは固まったままだ。
(えっと・・・どうしたものか・・・)
「ロイ!そこ退いてくれない?美羽の隣は、あたしの指定席なの。」
見上げると眉を釣り上げた真希ちゃんがトレーを持って立っていた。
「・・・。」
ロイクンは真希ちゃんを一瞥したがそこを退く事はしなかった。
「ちょっとっ!」
大きな音でトレーをテーブルに叩きつけ、真希ちゃんは声を荒げた。
「美羽、嫌がってんでしょ!」
ロイクンは未だ美羽っちの右手に手を重ねていた。
彼は美羽っちの右の耳に顔を寄せ
「・・・美羽、嫌?」
と囁く。
完全にロイクンのペースで美羽っちは声も出せずに居た。
それを良い事にロイクンは真希ちゃんに「嫌がってないと思うよ」と答える。
諦めたように真希ちゃんは美羽っちの左に腰を下ろした。
あたしと桃ちゃんは事の成り行きに圧倒され、口に運びかけた箸を中に浮かせたままだった。
その夜の事。
美羽っちのドアをノックする。
「はい。」
何時もの声で美羽っちはあたしを招き入れてくれた。
「・・・美羽っち。ロイクンと何かあったの?」
その名を聞いただけで美羽っちは身体を強張らせる。
「美羽っち?」
あたし達は適度なスプリングのベッドの端に腰掛けた。
「何もありません・・・ただ、怖いんです。」
「怖い?」
ぎゅっと握りしめられた白い手が、美羽っちの膝の上で小さく震えている。
「あの目です・・・。心の奥まで見透かれそうなあの目が怖いんです。」
怖い。
あたし達がロイクンのオッドアイを見て一般的に思う事。
それはきっと物珍しく「綺麗」と口に出来てしまう。
それが、美羽っちにとっては「脅威」になっている。
何故?
見透かれそう?
心の奥が?