44)嵐の前の静けさ
「・・・あ話したい事って何?ごめん、寝ちゃって。」
あたしは制服のスカートのプリーツを気にしながら、樋口の真向かいに座り込んだ。
「美羽っちがね・・・。おかしいの。」
真剣な面持ちで言うあたしに樋口はケラケラと笑う。
「何時もじゃん。」
(え、それってこの間までその人を好きだったって言ってた人の発言ですか?)
「違ーう!あのね、これ真希ちゃん情報なんだけど。今日ね、美羽っちの2Aにね、
編入生が来たの。しかもハーフ!ロイ・咲・オーウェンって言ってね。半端なく恰好良いのね!」
美羽っちは教卓の真ん前が定位置で、そのロイクンと目が合った瞬間、身体がビクって固まって動けなくなってたらしい。
さらにロイクンがそれをどう取ったか、「彼女の隣が良い」と流暢な日本で言い、美羽っちの席の
隣になった。
「ねぇ紗羽、何、読んでんの?」
樋口の指があたしの携帯をコツっと叩く。
「あ、真希ちゃんからのメール。何か話が長くなりそうだったからメールにして貰ったんだけど。」
あたしは携帯画面をスクロールさせる。
授業の間、ロイクンは頬杖ついてずっと美羽っちの事見てて、途中授業を退室。
美羽っちが居なくなった後は、ロイクンずっと机に突っ伏して寝てたらしい。
「んん、おかしいね。美羽さんがそんなに人に動じてるのって珍しくない?」
「そうなのそうなの。どうやらね、そのロイクン、『オッド・アイ』らしくて、それに驚いてる
んじゃないかって言うのが真希ちゃんの見解。」
「オッドアイ?って何。」
「詳しい事は解んない。あたしも未だそのロイクン見てないし。」