42)樋口の告白
溢れる涙を堪える事なんて出来なくて、それはとめどもなく溢れて、押し殺す事なんか出来ない
感情を樋口に吐き出した。
「何なのよっ!どうしてそんな大事な事を今、此処で言うのよ!どうして美羽っちには言わないのよ。
何で言わないのよっ!何で蓮兄に託すみたいな言い方すんのよっ!終わりなの?!終わりにしたいの?」
左手も樋口に捕えられ、あたしは項垂れるように涙を幾つも幾つもアスファルトの上に落とした。
「美羽さんを見ても、ドキドキしない自分が居たんだ。」
あたしは息を一瞬止めた。
「美羽さんが隣に居る事より、甘糟と居る時間が面白いとか楽しいとか・・・嬉しいとか
そんな感情が生まれてきた。自分でも勝手だと思うけど、一点の曇りもない素直な感情なんだ。」
「何・・言って・・・の。」
「甘糟を好きになった。」
ショートした。
今、あたしの脳内回路は煙を上げています。
「それだけ言っておきたくて。」
指先に感じる温かさは、本当ですか。
これは本物の樋口ですか。あたしが好きになった樋口の口から聞こえてきたのは間違いなく『告白』ですか。
あたしを好きだと、言ったのですか?
「・・・本当?」
「うん、本当。」
「・・・じゃぁ・・・樋口はあたしとどうなりたいの?」
「付き合いたい。抱きしめたい。キスしたい。エッチしたい。・・・料理が上手くなって欲しい。」
あたしは吹き出す。
「何で最後だけ切実な願望なのよ。」
樋口の右手があたしの頬を伝う涙を拭い取った。
見上げれば、そこに今まで見た事ない程の優しい笑顔があって、あたしは又泣きたくなった。
「ぜ全部、叶えてあげる。紗羽ちゃんに出来ない事は無いんだから!」
あたしは飛びつくようにして樋口の首に腕を回した。