30)それぞれが抱える想い
「・・・主語は言おうよ、紗羽ちゃん。」
おにぎりをぱくつく寸前の真希ちゃん。
「美羽っちと蓮兄と柊ちゃん。」
真希ちゃんが目の前のおにぎりを一度下す。
「確証は無いけど。」
(あ。この台詞、巨乳とのテニスの帰りにも聞いた気がする)
「えー?!」
真希ちゃんが肯定した事であたしの疑惑が形を形成し始めて、言った自分が興奮し始めた。
「えーって・・・。多分ね。蓮は間違いようもないけど、柊も美羽の事、好きなんじゃないかなぁ。」
「え?え?何見て思ったの?何時気付いたの?」
「えー紗羽ちゃん、うざっ。」
真希ちゃんが苦笑いをする。
「え、ごめんっ。でもでもだってあたし全然気付かなかったよ?てか柊ちゃんはあたしの事
好きだと思ってた!」
「えー。・・・ウケル。」
ちょっと考えてから真希ちゃんは話し始めた。
「何を見て・・・かぁ。体育の時、男子と女子分かれてるじゃん?そん時さ、あたしは美羽と
居るじゃない?で視線感じるなぁと思って見ると大抵、それは蓮の視線な訳。で次は何気なく
男子の動きっぷりとか見ると柊がチラって感じで何処かを見るの。何見たんだろって思って見ると
その先に美羽が居るんだよね。」
「何回かそういう事あったんだ?」
「有ったし、授業とかもあたし席が一番後ろで、美羽、教卓の真ん前が定位置なのね。廊下側の後ろに
座ってる柊が美羽、見てる気がするなーっても思ってる。」
あたしは”はー・・・”と感嘆の声が零れる。
「微塵も感じられなかったあたしって・・・。」
思わず頭を抱える。
真希ちゃんのおにぎりの海苔の音が聞こえる。
「柊は、んぐ、言うつもりもなければ、んぐんぐっ、知られたくないんじゃない・・ごくっ、かな。」
「・・・柊ちゃん、あたしにはずっと”俺は美羽と一日居ると疲れる”って言ってた。」
苦しくないのかな。抱えた想いを誰にも話さずに居るのってしんどくないのかな。