25)美羽っちの強さ
「それに暴力はいけません。力で物事は解決しません。」
真っ直ぐに3年の顔を見回しながら言いきる美羽っち。
地面に足を突っ張って、膝が、握られた拳が実は小さく震えていたのをあたしは見落とさなかった。
「は、もぉ面倒なんだけどコイツ、まぢで。」
「行こうよ、もう。」
彼女らが立ち去る。
姿が見えなくなると、美羽っちがヘナヘナと座り込んだ。
「美羽っち・・・。」
あたしも美羽っちに視線を合わすべく、しゃがみ込む。
「紗羽ちゃん・・・大丈夫ですか・・あ大丈夫じゃないですね。顔に爪の跡と赤い腫れが・・・。
保健室に行きましょう。」
美羽っちの白くて少し冷たい手があたしの頬を優しく撫でた。
「俺が保健室連れて行きます。美羽さんは直ぐ試合始まると思うんで行ってください。」
「でも紗羽ちゃんが・・・。」
「美羽っち、あたし樋口に連れてって貰うから。試合行って?蓮兄待ってると思うし。
手当終わったら直ぐにコート行くからさ、ね?」
美羽っちは渋々ながら”お願い致します”と樋口に一言言った。
「歩ける?」
「うん大した事ない。大事になる前に二人が来てくれたから。」
「・・・震えてたな、美羽さん。」
「うん。」
樋口も見てたんだ。・・・だよね・・・。
「凄いな、美羽さん。本当に甘糟の事、大切に想ってるんだな。」
「え?」
「美羽さんが甘糟が応援に来てないって言いだして岩崎さんが”もうちょっとしたら来るよ”って
言ったんだけど、絶対来るって言ってたのに来てないって事は紗羽ちゃんに何かあったのかも
しれないって・・・。美羽さんは甘糟の言葉を信じてるから、そう言いきって此処まで探しに
来たんだ。」
そう言われて嬉しいのはあたし。うん嬉しいよ、美羽っちがあたしを大切にしてくれてるのは
解ってるつもりだし・・・だけど。
何で樋口もあたしと同じくらい嬉しそうな顔するの?