24)正義
渡り廊下を通り、校舎内へと足を踏み入れる。
人の気配が殆ど無く、ヒンヤリとした空気が肌に触れる。
「甘糟っ。」
下駄箱から靴を取り出そうとした時にヒステリックな声を聞いた。
声のした方に顔を向けると、3年女子4人が腕を胸の辺りで組み、きつい視線を
あたしにくべた。
「ちょっと話があるんだけど。」
「・・・後にして下さい。テニスの応援に行きたいんで。」
「うるせーよ、調子乗ってんじゃねーよ。」
(不良です。先生、不良が居ます・・・一人はさっきのバレーの試合で見かけた顔です)
4人対1人じゃ、分も悪くあたしは人けの少ない焼却炉のある裏庭に連行される。
「お前、2年の甘糟の妹?」
「そうです。」
「ふーん、2年の甘糟も相当ウザイけど、お前も1年の癖に生意気なんだよ。」
(・・・これはあたしは今シメられてるんですかね)
「何処見てんだよっ!」
不意にあたしの左肩が衝撃を受け、足が一歩後退する。
(・・・理不尽な事は嫌いな紗羽ちゃんです)
「何だぁその目は!」
相手の一人が又あたしの肩を一突きする。
あたしはその手を取ると、力いっぱい押し退ける。
「いまどき、こういうの流行ってないですよ?先輩。」
そう言うと相手は4人がかりであたしに手を伸ばしてきた。
一人は髪を引っ張り、一人は顔に平手をして・・・沢山の手があたしに伸びてきた。
「何してるんですかっ!」
「甘糟!」
彼女らの手が止まり、あたしは声の主を確かめるように首を回す。
美羽っちと樋口だった。
美羽っちはあたしに掛けられる多くの手を引き剥がす。
「紗羽ちゃんが何かしたんでしょうか。」
「お前には関係ない!」
美羽っちは押され、よろめく。
「おいっ!」
樋口がその行為に大声を上げる。
「関係なくありません!紗羽ちゃんは私の大切な人です!」