22)あたしらしい
午後の授業が始まると樋口は又、机に伏せていた。
・・・あたしの気も伏せていた。
同情って・・・。そんな気持ちでお弁当を作ったつもりは更々無かった訳で。
でも、じゃぁ何でお弁当を作ってあげようって気になったかって言われたら
家の事情を聞いたからって答えるかも。
それから、美羽っちが純過ぎてゴメンネって意味合いもあったかもしれない。
・・・やっぱり心の何処かで『可哀想』って上から目線だったのかもしれない。
あー・・・きついなぁ。
良かれと思ってした事が相手にしてみれば不要だったって・・・。
あー・・・駄目だ。こんなの紗羽らしくない!
あたしは椅子を後ろへと押し退けて勢い良く立ち、2列前の樋口の席へと歩み寄る。
「ごめん樋口!」
樋口の肩がビクッと震え、顔を上げる。
黒板の方に向けられた視線は真横に立つあたしへと、向けられる。
「・・・?」
「ごめん。」
「?!」
あたしは言い逃げで、そのまま教科書を机の中に仕舞い込み、教室を後にする。
後ろで先生があたしの名を呼んでたけど、完全無視。
下駄箱でローファーに履き替えていると、樋口も鞄を持ってあたしに倣っていた。
「何してんの樋口。」
「お前こそ堂々と授業バックれんなよ。」
樋口は又欠伸をする。
「・・・ごめん。」
「何回も謝れる方がきつい。・・てか悪かったな、せっかくの好意に”同情”とか
そんな事言って・・・ごめん。」
「だって・・・そうだったし・・・。」
樋口は吹き出す。
「言うか普通。『同情でした』って。ははっおもしれーなお前。」
「・・・美羽っちの為に双葉に来たんでしょ?公立じゃなくて・・・。」
「まぁ・・・そういう事になるか・・・な。」
「それも何か判んないけど、ゴメンって言いたい。」
あたし達はどちらの家に帰るでもなく、彷徨うように歩き続けた。