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恋愛日記  作者: 椎葉碧生
21/99

21)初めてのお弁当

4時限目の現国が終わると、あたしは机に突っ伏している樋口に声を掛けた。

「ねぇ授業終わったよ?!」

「ん・・あぁ・・・。」

大欠伸をして身体を起こす樋口。


(バイトで疲れてるのかな)


「ねぇ一緒にお昼食べない?お弁当作ったんだけど。」

「え?弁当?」

「あーうーん、ほら昨日のいちご牛乳のお礼だよ。」

樋口は少し怪訝な顔をしたものの、食べ物に釣られ、屋上であたしと隣り合って座っていた。


「何この茶色い物体。」

「・・・卵焼きだけど。」

あたしが用意した箸でその物体をつまみ上げる。

少し怖そうな面持ちで口へと運ばれる。


(え食べ物ですが?)


「・・・あ、んまい。俺卵焼きは甘いのが好きなんだよね。」

「え。まぢ?!んまい?」

あたしの驚きに樋口は眉を顰めて言う。

「味見とかしてねーのかよ。」

「・・・。」


(笑っとこうか、ここはね。紗羽ちゃんスマイル☆)


それから樋口は黙ってもごもごっとお弁当をたいらげた。

お弁当の定番と言われる卵焼き、唐揚に加え、アスパラのベーコン巻に

ほうれん草の胡麻和えは、胡麻一つ残されることなく樋口のお腹の中に消えていった。


それを見て、あたしは素直に嬉しいと思った。

自分が作った(正確には卵焼きとベーコン巻だけ・・・)お弁当を

ピッカピカに綺麗に食べてくれたことが嬉しかった。


「ごっつぉーさん。」

樋口は体の前に両手を合わせ、そう言った。

「お粗末様でした。」


「同情なら要らねーよ。でも弁当ありがと、美味かったよ。」

返されたお弁当箱を巾着の中にしまう途中のあたしの手が止まる。

樋口は立ち上がり、あたしをだだっ広い屋上に一人にした。


”同情”って・・・。


あたしが同情したって思ってるの?


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