17)蓮兄の告白。
月曜の朝、何時ものように岩崎家の前で柊ちゃんと蓮兄はあたしと美羽っちを待っていた。
あたしは蓮兄の横を陣取って、先に歩き出した。美羽っちは柊ちゃんと。
「・・・蓮兄、美羽っちとどうなりたいの?」
「紗羽にそんな事言わなきゃいけないの?」
「どうしても美羽っちなの?」
「美羽しか考えられないよ。」
あたしが蓮兄を見上げて話し掛けていると言うのに、蓮兄はあたしを見ようとはしない。
美羽っち相手なら有り得ない事だった。蓮兄は何時も、美羽っちの瞳を見つめてる。
「・・・昨日の事、美羽っちから聞いたけど・・・。」
あたしの言葉を蓮兄が遮った。
「俺は美羽の”特別”になりたい。花の話だって、ピアノの話だって何だって良いよ。
その話を真っ先に俺に話したいと思って欲しい。誰かと同じは嫌なんだ。」
「・・・蓮兄、あたし。束縛は止めて欲しい。美羽っちには美羽っちの世界があるんだよ?
誰かと同じは嫌って・・・それってただの負けず嫌いなんじゃないのっ?何時だって一番、
何だって一番の蓮兄が、美羽っちだけは自分を一番として見てくれない事が悔しいだけじゃないの?」
「紗羽、声デケーよ。」
後ろから柊ちゃんの叱責。
あたしは自分を戒める。
蓮兄の眼があたしを捕えていた。思わず慄いてしまう程の瞳。
「美羽に触れたい、キスしたい、抱きしめたい、セックスがしたい。・・・この想いも
ただの負けず嫌いだって言うの?」
本気なんだ・・・蓮兄は本気で美羽っちが欲しいんだ。
「・・・ごめん。」
あたしは思わず謝った。すると蓮兄が
「紗羽が美羽の事、大事に想うのは解ってる。・・・俺は美羽を傷つける様な真似はしないから
そこだけは安心してよ。」
と優しく言った。