13)蓮兄の苦悩
「それで蓮君が幸せな気持ちになれば素敵な事だと思います。」
「・・・なる訳ないでしょ。」
小さな声だった。
でもあたしには蓮兄のその声が届いた。
巨乳とデートをする、そんな約束をさせられた蓮兄。
「あたしからのお願いは・・・。」
蓮兄にあたしの説教を聞いて貰う事だった。
でも、蓮兄も苦しい想いがあるんだなと思ったら、そんなお願いは出来なかった。
「・・・ジュース奢って貰おうかな。」
「ジュースですね。では私が行ってきますね。」
美羽っちはバッグの中から財布を探し出し、コートを後にした。
フェンスを越えると直ぐに、チャリンチャリンチャリンと音が。
少しも慌てることなく、美羽っちはお金を拾い上げる。
「天然ねぇ。」
と巨乳がしみじみ言った。
「黙れ。」
強い語調で蓮兄が言う。
”普段”の温和な蓮兄を知ってる真希ちゃんとあたしを顔を見合わせた。
15分近く経って、胸元に飲み物を抱え美羽っちは帰って来た。
「紗羽ちゃん、お水。蓮君、お水。真希ちゃん、スポーツドリンク、土方さんも真希ちゃんと
同じもので良かったですか?はい、あとコーチもお水にしました。」
美羽っちは、人の事をよく観察しているのかそれぞれに望むべき飲み物を配付した。
「美羽のは?」
真希ちゃんが聞く。
「あ、買い忘れました。」
「じゃぁあたしと半分こしよっ。」
「良いですか?わぁありがとうございます、真希ちゃん。」
ペットボトルの蓋を開け、美羽っちは飲みだした。
勢いよくボトルの中から飲料が押し寄せ、美羽っちの口元からスポーツドリンクが
こぼれ落ちた。
それを、蓮兄が自らの唇で、すくい上げた。