12)勝敗は。
「美羽!」
真っ先に駆け寄ったのは、蓮兄だった。
美羽っちは直ぐに姿勢を戻した。
「うわーボールって痛いですねぇ。吃驚です。」
「ごめんねぇ美羽ちゃん、怪我はない?」
完全に演技ぶった巨乳がネットに詰める。
「コーチ・・・美羽っち怪我させたらあたし、許しませんよ?」
「やだ、わざとじゃないのに。」
「怪我してるかもしれない、医務室ありますか。」
「蓮君、大丈夫です。何処も痛くありませんから。全力で頑張りましょう。」
当然の事ながら勝ちに行く巨乳は、ボールを全て美羽っちに差し向ける。
あたしだって勝ちたいが、美羽っち攻めには同意出来ない。
何とか蓮兄を端から端へと走らせ、疲れさせたところできわどいショットを決める。
美羽っちもチャンスボールには応え、ポーンとこちら側に返球。
チャンスボールをチャンスボールで返すのだから、巨乳はトップで打ち込んだ。
試合はまぁ思惑通りに、あたしらが勝った。
「負けてしまいました。お願い事とは何でしょうか。」
「あたし、蓮クンとデートがしたいわ。」
言ったよ!言っちゃったよ巨乳!
「ちょっとっ!」
流石に真希ちゃんが口を挟んできた。
「デート・・・って、好きな人同士がするものなのではないんですか?」
「恋に発展するかもしれない二人がしても良いのよ、美羽ちゃんはした事ないの?」
「恋・・・。何だか最近その手の話を良く耳にしてはいます。でも私は木々やお花に
囲まれているだけで幸せです。蓮君、コーチがこうおっしゃっていますが何時になされますか。」
え、デートのお願い聞き入れるの前提?美羽っち。
「俺が誰かと一緒に居ても良いの?」
タオルを頭から掛け、顔を覆い隠していて蓮兄が今、どんな顔をしてそんな言葉を
口にしているのか解らなかった。