10)そういうキャラでしたっけ?
・・・蓮兄、顔が・・・ちょっと怖めですが。
あたしはオズオズとフェンスに近寄る。
「な何。」
「何でテニスの練習してるの?美羽が。」
「・・・蓮兄の足、引っ張らない程度にはした方が良いかなって・・・。」
そんな端正なお顔立ちで睨まないで!あたしは今、正にカエルですよっ!ケロケロ。
「美羽がそう言ったの?」
「違う・・・でも、ほら見て!ラケットに当たるようになったんだよ?!」
あたしは美羽っちに振り返った。
美羽っちとコーチがこっちを見てる。美羽っちの口が”蓮君”と動いたようだ。
先に足を踏み出したのは、巨乳のコーチだった。
うあっ・・・駄目だ、「蓮兄」ロックオンになってる。
「こんにちわ。紗羽ちゃんの彼氏?」
あたしの否定より早く、蓮兄が
「美羽、帰るよ。」
とネットの向こう側に居る美羽っちに声を掛ける。
コーチは無視されたのが癪に触ったようだった。
「美羽ちゃんの彼氏かぁ。どう?美羽ちゃんも少し進歩したみたいだし、ご一緒に。」
完全に女の色香を噴射してますけど、コーチ・・・。
美羽っちがパタパタと駆け寄って来た。
「蓮君、テニス面白いですね。一緒にどうですか?」
一言言うと、蓮兄は目を細めて笑みを零す。
「俺が教えるよ。」
「私はあちらの壁で練習してきます。麻田コーチとか紗羽ちゃん、真希ちゃんと
テニスされると良いのではないでしょうか。球技会、優勝してしまうかもしれませんね?」
ラケットを胸元に抱え、上気した面持ちでの、美羽っちのとびきりの笑顔。
蓮兄を盗み見ると、美羽っちが愛おしくて愛おしくて仕方ないって顔をしてた。
「良いんだよ、俺は美羽と居たいから。」
・・・蓮兄、サクっと言ったね。
普通の女子はコロッだよ、それ。てか、剣道部の練習試合はどうしたのさ。
「蓮兄、部活どうしたの?」
「・・・紗羽さぁ、美羽をあんまり人目に晒さないで。」