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⑴『虹の影』
⑴『虹の影』
㈠
虹に影なんかできないだろうが、それにしても、憂鬱な朝だ。煙に巻いた言葉たちが、脳内をぐるぐる回っている。俺のための人生などというものが、一向に現れない以上、眼前を裁断するのが、適しているのだろうか。
㈡
憂鬱な朝には、缶コーヒーが良く似合う。訳の分からない、我々の我々が、空位となり、常軌を逸した自動車の暴走が、俺をまた、苛むんだ。例えようのない、事実概念とやらが、目まぐるしく、虹の影という言葉を生み出そうとしている。
㈢
結句、我々には届きそうもない範囲で、世界の合理性は前進し、羊の群れを、救いだすのだから。そこになら、影の虹というものは、出来上がるかもしれないが、それにしても、何度も言う様だが、憂鬱な朝だ、もう一度、眠りに入ろう。




