~エピローグ~
ある町でヒーローの格好をして町をパトロールするもとくに事件もなく、かといってヒーローのような事をする勇気もなくただのコスプレ好きに見える青年がいた。彼の名はツナグ。
「今日もこの町は平和だなぁ...暇だなぁ」
空を見上げると太陽の光が眩しい。いつも通り町を自称パトロールするも、周りからの視線が痛い。
「ほら、またあの子変な格好してるわよ。」
「やぁねぇ、良い歳にもなって!」
近所のおば様方は、今日も井戸端会議に勤しんでいるようだ。
「ん~...よし!たまには裏道から通ってみるか!あそこは狭くて暗い道だし、事件が起きそうなことこの上なしだ!」
何も無いに越したことはないが、ヒーローとして事件の匂いを放ってはおけない。
「よし、行くか!待ってろ事件め!」
あの時から僕の運命は変わってしまった。道を変えなければ、平和で空虚な日々が続いていたかもしれない。だけど出会ってしまったんだ。『あれ』に...
しばらく歩いていると、ぐちゃ...ぐちゃ...バキッ...ゴクンッ!!
「何だ、あのビルの隙間から音がするぞ...」
異様な音がする。恐る恐る覗きに行くと、女性が巨体の男に腕を押さえられ身動きが取れなくなっているように見えた。
(な、なにしてるんだあいつ。助けないと!でも...)
恐怖で震える心とは裏腹に、僕の体は勝手に動いていた。
「ん...何だ?お前は。」
男がゆっくりとこちらを振り向く。筋トレなんてしてないから、殴ったりしても威力はないはず。男が体制を崩してる間に、あの女性を連れて逃げればいい!
「僕は正義のヒーロー、スーパーノヴァだ!!悪者め!くらえっ!!」
僕は必殺の体当たりをした。結果は少し離れたところに、僕が弾き飛ばされていた。
「痛てて、あの女性を早く助けないと。う、おぇっ。」
倒れた位置から見えたのは、片腕と足の無い女性の姿だった。
「何だよ、何してんだよお前っ!!」
男の方を見ると腕に無数の口があり、右腕にある口の一つが女性の腕に食い付いている。
「ば、化け物っ」
くそっ、なんでこんなことに...
「ちょうどいい、この女は身が少なくて物足りないと思ってたんだ。なぁ、ほら、ちょっとこっちに来いよ!痛くしないからさぁ!」
(女性の顔は青ざめており、もう息がない。じゃあすぐ逃げなきゃ!警察に!いや警察でどうにかできるのか!)
考えが進まない。足も恐怖で動かない。
「ほ~ら、早く逃げないと喰っちゃうぞっと!」
腕にある無数の口から、一つが僕を目掛けて迫ってくる。
ばくんっ!!
「うわあぁぁっ!!」
泣き叫びながら激痛の走る足を見ると、右膝から先が無くなっていた。
「くそっ、くそっ。逃げなきゃ、死にたくないっ!」
必死に這いずるようにして路地から出ようとするが、段々と意識が遠退いていく。薄れる意識の中、走馬灯が駆け巡る。しかし、
「あれ、楽しい思い出何も...無い...何なんだよ僕の人生...」
幼い頃に両親を事故で無くし、孤児院を出てからはコスプレしてヒーローの真似事。涙が止まらなくなり景色が歪む。
「ほら、もう片方も食べちゃうぞっと!」
ばくんっ!!
左の足にも激痛が走る。
「うぅっ、ひぃひぃ...痛いよぉ...」
僕はこんな訳の分からない奴に喰われて死ぬのか。もう駄目だ...意識が...。その時頭の中に知らない男の声が響いてきた。
「死にたくないか?死にたくなければワシと契約しろ!そうすればお前の望む力を与えてやれる!」
「誰だよ...お前...もういい、なんでもしてやる。僕の人生...このまま終わるのは耐えられないっ!!生きられるなら契約してやる!!」
僕が答えると、着ているボロボロになったヒーロースーツが光だした。光と共に喰われた足はみるみると治り、破れたスーツも元通りになっていく。
「こ、これは!」
「何をしたお前っっ!なんでお前に妖気が!!」
光が収まると僕は本物のヒーロースーツを着ていた。
この作品が初投稿になります。いんてらです!今までは読むだけでしたが、今度は自分も執筆して誰かに楽しい時間を過ごして貰いたい!そう思い、思いきって連載を始めてみました!暇潰しにでも、ちら~っと見て貰えたら嬉しいですっ!