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「警備クエストですか」


警備クエスト。


 先日の警護クエストと似た仕事だが、本質は少しだけ違うみたいだ。警護は要人を護るのが仕事だが、警備は街の住人の中に不審者などがいないかを警戒するのが仕事。


 もうすぐ、ここの領主の娘と婚約を結んだ、ウォード家の息子が来る。


「よくわからねーな」


 同僚のハルトが溢す。


「街で警備するのは分からないでもないけど、わざわざ街中で襲ってこなくても道中で襲えばいいんじゃね」


 警備が増える街中で襲うのはリスクが高い。それなら、守りの少ない道中で襲うほうが成功率も上がる。


「そういった事例もある。実際に、道中で襲われる貴族様も多くいるぞ。ただ今回の目的は、あくまで婚姻の破棄だからね。双方にある程度痛手を負わせるには、街中で襲うのがベストなんだよ」


「そういうもんですかねぇ」


 領主の娘は先日のこともあり、街に出てこなくなってしまった。だからこそ婚約者を街中で暗殺することで、不信感を植え付け食糧支援を躊躇させる。大事な親族を殺された領地からの食料支援など、何が入っているかわからない。


(……難しい)


 そういう駆け引きなどは生まれてから、あまりしてこなかったユノからすると、どこに人の悪意があるか分からない。


 だけど、こうしてヒナタ先輩から話を聞いていると、ギルド員の上位の人はこういったことにもある程度理解が必要そうだ。


(少しは、この国の貴族についても勉強しないと)


 力だけでなく、知識も増やすことが昇進するために必要だ。


 警備するルートの視察をする。


 確認するのは主要道、そして付近の建物。


「正直、視覚が多すぎますね……」


「そうだね。そもそも、暗殺を警戒するための作りはしてないからね」


 だからこそ私たちのような警備のものが必要だ。建物ではなく、不審な人物を見つける。普段から街に住んでいる私たちからすると、よそ者は浮いて見える。


「普段見かけない人物がいたら、身体検査をしていいから。街に入るときに説明がされてるはずだよ」


 そう言われて、ふとあたりを見渡すと、いつものベンチにいつもの人物が寝転んでいた。


「……」


あの人はいいか。


 不審人物だが、むしろ街の名物になりつつある彼は無視することにした。


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